③
康太が俺に叫びながら近付き、脛を蹴る。
「痛!なにしやがる!」
「へへ。悪いやつはやっつけないとね」
「何で俺が悪者なんだよ」
「だって全然顔出さないもんな。なぁ康太」
「ねぇー父ちゃん」
兄貴と康太は俺が痛がる姿を見てケラケラと笑っている。教育が失敗しているようだ。
「こら、いきなり蹴るのはダメでしょ!ちゃんと謝りなさい!あなたもそんな態度だから康太がやんちゃになるんでしょ!」
雫さんが兄貴と康太に厳しく声を掛ける。2人は申し訳ない表情を浮かべている。女性を怒らせてはいけないな。
「あの2人はいつもあぁだよね圭太」
はるかさんは圭太を抱き抱えながらいつもの光景をニコニコと見ている。
「圭太は康太みたいになっちゃダメだよ~」
「わかた」
圭太はまだ2歳だ。言葉も拙いながら話せるようになってきているようだ。前までは言葉すら発せていなかったのに。子どもの成長とは早いものだな。
圭太のことを見ていると、視線に気付いたようだ。俺に笑顔を向ける。自然と俺も笑顔で返す。
雫さんの説教が一段落し、全員で食事の準備をする。
ケーキの準備ができたので、部屋を暗くし、蝋燭に火を点ける。
「康太!お誕生日おめでとう!!」
みんなで用意したクラッカーを鳴らす。康太は勢いよく蝋燭の火を吹き消す。一撃だ。
部屋を明るくし、改めてみんなでお祝いのメッセージを康太に送る。
「じゃあ、おじさんからプレゼントだ」
俺は用意したプレゼントを康太に渡す。
「うわー!!武ちゃんありがとう!中見てもいい?」
「いいぞ」
康太はワクワクしながらプレゼントを開ける。プレゼントは…
「やった!!ブレードマンのブレードだ!」
康太が大好きなヒーローの武器の玩具だ。
「ヒーローに憧れてるから、好きかなと思って」
「やった!これで僕は最強だ!」
ブレードマンの決めポーズを見せてくれる。子どもとは実に無邪気である。
「康太、お姉ちゃんからもプレゼントがあるよ!」
「ありがとう!楽しみだな」
部屋の片隅に置かれていたやけに存在感のある大きい包。
「おぉ!すごい大きいね!」
「ふふふ。じゃあ開いてあげよう!」
はるかさんは自分のプレゼントを開封する。開封した中身は、巨大なゴリラの人形だった。場の空気が変わる。
「えっと…」
「絶対康太ゴリラ好きだと思ってさ。嬉しいでしょ!」
「うん…ありがとう。大事にするね」
康太の教育は成功しているのを感じた。はるかさんは場の空気に気付くことはなかった。




