②
佐藤武史から見た物語
都心から車で1時間。海が見える一軒家に到着した。今日は兄貴の家で長男の康太の5歳の誕生日会が行われるらしい。
独り身の俺は休日はうだうだした日を過ごすだけだから、このような外に出る機会を与えてくれるのはありがたい。
兄貴の家に到着し、車から出る。遠くから潮風の香りがほんのりと漂ってくる。
兄貴は子供たちを自然がある中で育てたいという思いをもっており、職場から離れているここを選んだ。
兄貴の奥さんの雫さんも仕事をしているため、ここから通勤するのは少し大変だろう。
…バイクの音が近付いてくる。
「あ!こんにちは!確か康輔さんの弟さんですよね?」
ライダー姿がとても似合う、大学生の女の子が俺に声を掛けてきた。
「君は?」
「私は望月はるかと言います!佐藤さんの家の家事手伝いのアルバイトをしてます!」
ヘルメットをバイクのハンドルに掛け近付いてくる。笑顔が眩しい。これからの日本の未来を担う期待を寄せれる人だな。
社会に揉まれ、会社の傀儡に成り果て、生きる楽しみも希望もほぼ無い俺とは真反対だ。
「今日も手伝いに来たんですか?」
「いえいえ!今日は康太くんの誕生日だからお祝いに来たんです」
じゃーん!と言って後ろを向いたはるかさんの背中に、何やら巨大な包に包まれた誕生日プレゼントが紐で結ばれていた。
「なんすかこれ?」
「へへへ。秘密です。弟さんも楽しみにしててくださいね!」
行きましょう!と俺の腕を掴みながら引っ張っていき、はるかさんは兄貴の家のインターホンを押す。
「はーい」
「雫さんこんにちは♪はるかです!康輔さんの弟さんも一緒です」
「どうもです」
「わざわざありがとう2人とも。今鍵を開けますね」
鍵が開く音が聞こえ、扉が開く。
「こんにちは雫さん」
「武史さん久しぶりだね!何かやつれてるね」
「はは」
「雫さん!康太くんが絶対に喜ぶもの用意したから期待しててくださいね!」
「はるかちゃんもわざわざありがとうね。せっかくの休日なのに」
「むしろ毎日でも佐藤さん家にいたいですよ」
「それは嬉しい」
俺たちは談笑しながらリビングに行く。
リビングには誕生日会用に飾りや食事が準備されていた。
「あ!武ちゃん!姉ちゃん!」
「よぉ!武史!久しぶりだな!」
どうやら男たちはヒーローごっこをしていたみたいだ。ヒーローベルトを腰に巻いた康太。怪人のお面を被った兄貴。そして、その光景を笑顔で見ている圭太の姿があった。




