⑨
『…強くなったんだな。もう、俺は必要なさそうだな。よかったなお前。大人のお前はかなり強くなったな』
『うれしい。ありがとう』
…なぜだが分からないが、涙が溢れてきた。嬉しさも悲しさも感じないのに、なぜだろうか。
『でもな、俺は消えることができないんだ。だから、事実を全て今知らせることはできないが、その内知っていくことになると思う。全てを知ったあと、どうなるか分からないが、俺もこいつも、ずっと心の中には残ってるから、見つけられそうだったら声掛けてくれ』
『ありがとう。2人のこと、これからも大事にするから』
その後、2人からコメントは無かった。でも、有益な情報を得ることができた。これは貴重な証拠だ。現実的にはあり得ないことだが、夢だからこそ立証できる証拠。これを明実さんに伝えよう。
涙を拭き取り、僕は改めて店へ向かった。
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僕は、草間と明実さんに、過去の自分と守護者のやり取りを見せた。
「過去に僕は明実さんに会っていた。その時に、あなたから草間の妹だと聞いていた。過去の自分の証言。これが証拠です」
僕の話を聞き終えた明実さんは、鼻で笑った。
「はっきり言って証拠にも何もならないけど、でも、あんたが思い出し始めていることに免じて、証拠として受け止めてあげる」
「ありがとうございます。僕は探偵に向いていないって痛感しています」
僕の言葉に確かにと呟きながら、明実さんは笑った。穏やかな表情を見ていると、年頃の女の子にしか見えない。
「じゃあさ、俺が後藤の名前でバイク買った理由はなんだ?」
草間の横槍で再び推理の時間が始まる。
「現実の事件と草間、明実さん、後藤さんの関係性から考えたことなら話せる。これは証拠がないけどいいか?」
「いいぞ。ある意味お前の記憶の整理の時間みたいなものだからな」
「草間の家庭環境は悪かったよな。裕福とは真反対だったはずだと思うが合ってるか?」
「いきなり家庭環境をディスるのか?まぁ、お前の言う通りの状態だった」
「明実さんはバイクの免許は取得していた。しかし、バイク自体を買えるお金は無かった。そこで、草間は後藤さんにある話をした。『本田さん殺害のために、妹にも協力してもらう。移動のサポートなどのためにバイクがほしい』って」




