②
少しずつ、嗅ぎ慣れた潮の香りが漂ってきた。そして、夕焼けが沈んていく様子が、何よりも綺麗だ。
何だが数年ぶり位に戻ってきたような、そんな気がする。
実際この夢の中では、全ての出来事は1日の中で起きている。
夢の世界にいると、時間の概念がおかしくなってしまう。
今回の全ての始まりであり、夢の中の職場のバイク屋に到着した。
「佐藤さんお帰りなさい!」
唯が笑顔で出迎えてくれる。唯と会うのもかなり前のように感じる。
「出迎えありがとう。はるかさんとは電話つながった?」
「いや、全くです。考えたくないのですが、もしかして亡くなっているんじゃ…」
唯はみるみる瞳に涙を溜め始める。今にも溢れてしまいそうだ。
「佐藤さん、ご無事でよかったです!」
友樹も続けて現れる。
「友樹もありがとう。色々バランサーとして頑張ってくれて嬉しかったよ」
「佐藤さんに期待してもらったから頑張れました!こちらこそありがとうございます」
友樹と唯。2人が揃っている。
「…変なこと言っていいか?」
「どうしました?」
「実はな。この世界は夢の世界なんだ」
「…何言ってんの?」
「そして、現実世界の2人は、俺の弟と妹なんだ」
2人は互いの顔を見合わせる。そして、僕の顔を見る。
「佐藤さん…ごめんなさい無理させて…」
「この後は俺に任せてください。まずは休んでください」
「いやいや、俺は正常だよ。だからさ、いつも2人が言ってる『兄ちゃん』って呼んでほしい」
2人は互いの顔を見合わせる。2人は僕から少し距離を取り、相談を始めた。
「なに、どういうこと?」
「俺も分からない。佐藤さん疲れちゃったのかな」
「家族ごっこがしたいってこと?とりあえず付き合ってあげる?」
「そうだな。それで佐藤さんの心が癒やされるなら」
2人は僕に向き合い、笑顔を浮かべる。
「「お帰り兄ちゃん!」」
僕は2人の言葉に安らぎを感じた。幸福感で満たされた。2人の表情は見ていない。




