①
意識が戻る。僕の目の前には相棒のバイクがある。
再び夢の中に戻ってきた。
携帯の写真フォルダーを開く。雫さんと康太くんと撮った写真。本田さんと後藤さんと撮った写真。僕も含めてみんないい笑顔をしている。
僕は店長へ電話を掛ける。
「どうした?さっき電話したばかりだろう」
「現実の世界に戻ってました。…店長。いや、父さんと呼んでいいかな?」
僕の提案に店長(父さん)はモジモジしている。
「ん…まぁいいよ。父さんと言われて嫌な気はしないからね」
「ありがとう。こっちのほうが僕にとって自然だからさ」
「そして、話してる感じ、進展があったんだね」
「うん。だから、最初であり最後の事件を解決するために、今から帰るね」
「気を付けて帰ってこいよ」
電話を切り、バイクに跨る。エンジンを掛け、ギアをニュートラルからローギアにする。左手のクラッチを少しずつ開き、加速させていく。
…今更だけど、僕はバイクの免許を持っていない。なぜバイクの乗り方を知っているのか不明だが、ここは夢のご都合主義だろう。
それよりも、楓が言っていた言葉が気になる。
草間は2人の殺害の容疑が掛かっている。
恐らくだが、その2人は、はるかさんと明実さんではないか。
しかし、草間が否定している理由は分からない。
あの男なら、間違いなく容疑を認めるだろう。でも、その男が否定しているということは、はるかさんと明実さんは別の人物による殺害か…
まて…そもそも2人は亡くなっていないのでは?
様々な可能性が考えられる。でも、全ては店に戻り、事件の解明をしてからだ。
僕は一度、全ての思考を断ち切り、運転に集中して、バイクを走らせた。




