①
目が覚める。時刻は午前5時。睡眠時間は6時間。
6時間寝ている中で、夢では何日も経過している。つくづく夢とは不思議なものだ。
「圭太、起きたの?」
隣で寝ていた楓が半分寝ぼけた状態で問い掛ける。圭介は僕の足元で寝ている。彼は非常に寝相が悪い。
「あぁ、おかげで少しわかったことがある」
「そう。それはよかった」
「楓の言葉のおかげで、自分のことを知ろうと思えたよ。本当にありがとうね」
どういたしましてと言った後、楓の寝息が聞こえる。再び彼女は夢の世界へと旅立って行った。
この時間はいつも父さんが起きている。父さんに、夢で得た情報を基に、推理した内容を伝えようと思い、リビンクへと向かった。
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冬の近付きを証明するかのように、廊下や階段はとても冷えている。季節を肌で感じることは、生きていく中で大切だと思う。
コーヒーの匂いがする。父さんはいつも朝食を食べず、ブラックコーヒーを飲んでいる。それは僕も同じだ。親子は習慣も似るのだろうか。
リビングのドアを開ける。椅子に座ってコーヒーを飲んでいる父さんが居た。
「圭太、おはよう」
「おはよう父さん」
「コーヒー飲むか」
「うん」
昨日の雰囲気は消え、いつもの父さんだった。席を立ち、台所に向かう。ステンレスのケトルに父さん特製のコーヒーが入っている。そのケトルからコーヒーをカップに注ぎ入れる。
「どうぞ」
「ありがとう」
一口飲む。楓のコーヒーよりも苦味が強い。そして、夢の中の父さん、店長が淹れてくれるコーヒーと同じ味がする。
「父さんのコーヒーは苦味が強くて美味しい」
「お前の好みに合わせているからな。普段はもう少し薄い」
「僕が飲むって知っていたんだね」
「何年一緒に居ると思ってるんだ」
少し小馬鹿にしたような、僕の発言を鼻で笑う。
「父さん、昨日はいい夢を見れたよ」
「…」
僕の言葉を聞き流すように、父さんはコーヒーを見つめながら、一口飲む。




