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なぜ、その2カ所だけシミがあるのか。その理由は今は分からない。
倉庫を出て、相棒のバイクを停車したところに到着する。
そのタイミングで携帯が震える。誰かからの着信だ。確認すると店長からだった。
「もしもし?」
「もうそろそろ建物を回り終えたんじゃないかと思ってな」
「はい。丁度回り終えました」
「何か分かったか?」
店長の質問に、行方不明事件につながるものは何も得られなかったと伝える。
「…そうか。お疲れさんだったな」
「店長が言ってたことと違うことが2点あります」
「なんだ?」
「最初に行った場所は過去に町ではなかったです。今いるところは、建設会社ではなくゼネコンです。まぁどちらも大枠では似てはいるかと思いますが」
「…おじさんをからかって楽しいか?」
不服そうな声が聞こえる。
「いえ、少しからかってみたくなりました」
「性格悪いな。ところで、もうこっちには戻ってくるか?」
店長の言葉を聞き、草間に言われたことを思い出した。
僕はこの行方不明事件を解決することと、現実の父親に推理したことを伝えること。そうすることで、自分自身の人生の課題を知ることができる。
このまま行方不明事件解決に向けて動くか、一度現実に戻るか、どちらを選択するか考えた。
「…店長」
「どうした?」
「一度、現実世界の店長に会ってきます。僕が分かったこと、考えたことを伝えてきます。」
「現実世界の私?何を言ってるんだ?」
「店長。この世界は僕の夢の世界です。そして、店長は現実世界で僕の父なんです」
「佐藤くん。君が何を言っているのか分からないが。私のことを父のように思ってくれていることはとても嬉しいよ」
店長の嬉しそうな様子が携帯越しから伝わる。
「じゃあ行ってらっしゃい。私たちはいつまでも待ってるからね」
「ありがとうございます。必ず戻ります。そして、この事件を解決できるようにします」
電話を切り、目を閉じる。
きっと父は全てを知っている。父から情報を手に入れることができれば、この行方不明事件は解決することができる。そして、僕自身の問題も。
確実にゴールは近付いている。その期待感と不安感を抱えながら、僕は夢から醒めた。




