⑳
「だが、少しずつ、色が薄くなり始めていた」
「…なぜだ?」
「俺たちは互いに立場が変わった。守るものも変わってきた。その中で、あの彩りある日々とは異なる時間を過ごしていくうちに、楽しさも希望も薄まってきた」
後藤さんは続けて話す。
「一方、本田は新たに出会う人、新たに関わることに常に充実感を感じて過ごしていた。周囲も、お前への期待が強くなった。俺は初めてだった。人からの期待がなくなり、モノクロになっていく一方、逆に色鮮やかに輝く人間を見ることが」
後藤さんは、今まで自分にしか色がなかった。だから、周囲が白黒に見えた。でも、本田さんという存在が、立場を変えた。今度は後藤さんがモノクロの世界に来たということだ。
「その時、俺は感じた。なんで本田だけ輝いているのか。俺はなぜモノクロになってしまったのか。考えれば考えるほど、本田へのネガティブな気持ちが高まっていった」
後藤さんも自分の気持ちを言語化できないほどの思いが募っていたのかもしれない。
「そんな時、草間という男と出会った。草間はこの会社の社員だった。しかし、女性社員へのストーキングをはじめ、それを指摘した直属の上司への暴行などから退職させられた。」
思わぬタイミングで草間の情報が出てきた。草間が勤めていたのは、この会社だったのか。
「退職した草間に声を掛けた。俺はある計画をこの時企ていた」
「その計画って…」
「…本田の殺害だ」
僕の憶測は的中していた。そして、後藤さんの殺害の動機は
−−−私怨
後藤さんの表情が曇っていくが、本田さんは何一つ表情が変わらない。
「草間を金で釣り、本田の殺害の実行犯としての依頼をした。成功報酬として、俺の全財産を渡すと約束した」
「そこまでして本田さんを憎んでいたのですか?」
悲しそうな表情を浮かべながら、僕の質問に答えた。




