⑱
ミーティングスペースを出ると、さっきまでいた社員の人たちは居なくなっていた。まるで、初めから存在しなかったかのように。
ふと時計を見ると、時刻は午後7時に近付いていた。雫さんと康太くんが殺害された時間と近い。
「すっかり人が居ないな。さっきまで昼間だったのに、こんな薄暗くなっているし」
「そうですね」
「本当に夢の世界だったんだな。でも、映画みたいでワクワクするな」
子供のような無邪気さで現状を捉えている本田さんはすごい。
「…行きましょう」
僕たちはエレベーターに乗り込み、倉庫へと向かう。
−−−−−−−−−−−
倉庫の前に到着する。周囲の建物は全て灯りが消えている。しかし、倉庫だけは光が灯っている。
「どうやら、世界はここしかないみたいだな」
「…やっぱり恐いです」
弱気な僕の背中をバシン!と叩く。
「騎士様が泣き言言うなよ。俺のこと守ってくれるんだろ?」
「そうでした」
僕は倉庫近くに停車してあるトラックに近付き、手頃な鉄の棒を引き抜く。
「剣ではありませんが、いざという時のために」
「中々に物騒だな」
僕たちは倉庫の中へ入っていった。
−−−−−−−−−−−−−
倉庫の中ももぬけの殻だ。だからこそ、すぐに目の前の人物を認識できた。
−−−−後藤さんだ。
「よぉ後藤!」
いつものようなフランクさで後藤さんに声を掛ける。
「…来てくれたか」
「当たり前だよ。俺はお前のことを信じているし、何があったのか教えてほしいしな」
後藤さんに近付こうとする本田さんを僕は静止する。そして、草間の姿を捉えるために常に周囲を警戒する。
「佐藤。さっきはすまなかったな。嫌な思いをさせてしまったよな」
「気にしていません。それより、本田さんを呼んだ理由を教えてください」
警戒は怠らない。何が起きてもおかしくない状況だ。
「…本田に謝りたかったんだ」
後藤さんは静かに話を続ける。




