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「佐藤。もしかして、今この状況も、実は夢で見たことがあるのか?」
「いえ、本田さんや後藤さんとは初めて会いました。この夢自体が初めてです」
「…そうか」
本田さんはしばらく考え込む。そして…
「佐藤。俺は後藤に会ってくるよ」
僕を見つめる瞳に曇りはない。本田さんは、僕ではなく友の心を信じた。
「ダメです!危険です!」
「前も言っただろ?俺は自分の目で見たこと、聞いたことしか信じないって。もしかしたら後藤が草間に脅されているかも知れないだろ?」
「そうかもしれません。でも、もし僕の話が真実だったら、本田さんは殺されてしまう」
ミーティングスペースに鍵を締め、本田さんが出ていかないようにする。
「佐藤。なんでそこまで俺のこと心配してくれるんだ?」
確かに、これは夢だし、本田さんとは数日しか関わりがない。ここまでの感情を抱く方がおかしいのかもしれない。でも、本田さんは僕にとって大切で、守りたい人だ。
「…僕にも分かりません。でも、僕は本田さんを守りたい。大切だからです」
「俺は男にモテるのかな?どうせなら若い女の子にモテたいのにな!」
本田さんが今まで見たことないぐらいの大声で笑う。その姿に、殺されてしまうことの恐怖感は感じない。
「笑い事ではないんです。」
「ごめんごめん。でも、俺は殺されてもいいと思っている」
「は?」
「俺はさ。ずっと佐藤と関わりたかったんだ。初めて会った時から、お前には懐かしさというか、あぁやっと会えたみたいな嬉しさを感じたんだよ」
本田さんは笑顔で続ける。
「でも、お前はロボットみたいでさ。無駄な話はしないし、必要なことしか言わない。俺はもっと佐藤のことが知りたかった。そしたら、急に本物の佐藤が現れたからさ。そして、佐藤の色んなことを聞けて、もう悔いはないなって感じてたんだ」
…言っていることが分からない。
なぜ、そこまで僕のことを知りたかったのか、関わりたかったのか、悔いはないと言い切れるのか。




