③
「佐藤くん。そろそろ開店しても大丈夫かな?」
「大丈夫です!」
店長チョイスの小粋なBGMが店内に流れ出す。いつもの1日が始まる。
僕は店の裏側の作業場で依頼されているバイクの整備や修理を行う。
−−少し過去の話になるが、僕は16歳の時に店長に拾われた。
元々身寄りもなく、高校にも進学せず、日雇いで働いていたときに、この店でバイクを眺めていたある時。
「バイクは好きかい?」
「いや…あまり」
「なに?じゃあなぜここにいるんだ?」
「仕事場が近いので、たまたまです」
僕の姿を見ながら、店長は訝しげに質問する。
「君は今何歳だい?」
「16です」
「高校には?」
「行ってません。家族とかいないですし、進学する余裕なんてないですし、今生きれればそれでいいので」
「…なんだって。それはダメだ。たしかに君の生きている環境は大変なことが多いだろう。でも、だからといって自分の人生を適当に生きていい理由にはならない」
「…言いたいことはわかりますよ。でも、現実的に無理なこともあります。僕は自分の身に合った生き方をしているだけです」
「そんなことは許さん。私が君を買い取る」
「…は?」
「君が自分の人生に希望をもてるように、私が君の人生を金で買ってやる。まずは今の職場を辞めて、ここで働きなさい」
「いや、今日出会ったばかりの人間に何を…」
「君は素晴らしい人間だ。私の直感が告げている」
人から褒められるとは、こんなに温かいものなのか。
本来であれば、警察に通報してもおかしくないところだが、この人は信用してもいいと、僕の直感が働いた。




