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その日の夜。本田さんは僕を飲みに誘ってくれた。
「佐藤お疲れ様。今日は大変だっただろ」
「はい。新入社員みたいな動きをしていたら、みなさんに奇妙な目で見られました」
「あの佐藤が全く仕事ができない。それに、めちゃくちゃ質問してくるってみんな話してたな」
僕が悪戦苦闘している姿を思い出したのか、本田さんはニヤついている。
「むしろ初めての世界で立ち回ったことを褒めてほしいですよ」
「そうだな。俺も同じ立場だったら佐藤のような行動してたしな」
本田さんならどこでもスマートにこなしていけそうだが。
「話は変わるが、この世界が夢なら、現実の佐藤はどんな人生を過ごしているんだ?」
僕は自分の仕事や家族、現実の世界の佐藤圭太について話した。僕の話を聞きながら、本田さんは様々な表情を浮かべる。
「一番は佐藤が結婚していることに驚いたな。ちゃんと人とコミュニケーション取れているんだな」
「まぁそれなりにって感じですけどね」
「そっか…幸せに生きてるんだな」
なぜか本田さんは涙を流した。
「本田さん?」
「え?何で泣いてるんだ?」
涙を流していることに本田さん自身驚いている。
「別に感動してるわけでもないのに…でも、何か涙が出てくるんだ」
「どうしちゃったんですか?」
「逆に教えてほしいわ」
おしぼりで涙を拭く。でも、涙を流す姿を見て、なぜか僕も自分の生きてきた道を本田さんに伝えることができてよかったと心から感じた。




