⑨
誕生日会はその後も続き、圭介の保育園の話や友樹と唯の近況、年末に行く家族旅行の打ち合わせなど、あっという間に夜になった。
友樹と唯は翌日に私用があるため、自宅に帰って行った。僕たちは今日、実家に泊まる。
「…楓さん、お願いを言ってもいいかい?」
「なんでしょう?」
「圭太と2人で話がしたいんだ」
いつも淡々と飄々としている父さんとは違う雰囲気に楓は気圧されている。
「だ、大丈夫です。」
「申し訳ないね」
楓は圭介を連れて寝室に入った。
気まずい空気が僕たちを包み込む。久しぶりの2人切りがこんな状況なんて。
父さんはグラスに入った酒を一口飲む。
「…昼間話していた件だが」
「夢の話?」
「うん。その、はるかという子には会ってないと思うが、雫という人と康太という人はどんな人だった?」
「雫さんは、康太くんをとても大事にしている、本当に優しい人だった。康太くんはまだ子供なのに、心がとても強い子だよ」
「…そうか」
「最後は一緒におにぎりを食べたり、鬼ごっこして遊んだりしてさ。なんか、そういう時間をもっと過ごしたかったというか。もう夢で会えなくて、本当に寂しい気持ちになったかな」
僕の話を目を瞑り、考え込みながら父さんは聞いている。そして…
「…もうその夢のことは忘れなさい」
父さんはいつもと変わらない表情をしている。でも、真剣な思いは伝わる。僕が子供の頃、何か思いを伝えたい時と同じだ。
「…何か理由があるの?」
「理由はない。ただ、心配をしている」
「心配?」
「圭太が圭太ではなくなるのではって」
…父さんは何を言っているんだ?
「僕が見た夢と僕の何かが繋がってる?」
「…すまない。この話も忘れてくれ」
そう言うと、席を立ち、リビングから出ていく。
僕は1人リビングに取り残された。




