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⑧
僕は、繰り返されてきた夢の中で、康太くんの傷付いた姿と雫さんの涙ばかり見てきた。
2人にとっての幸せは、草間の手から逃げ延びることだと思っていた。
でも、2人の、僕たちの幸せは、「3人で同じ時間を過ごすこと」だったのかもしれない。
時刻は午後7時になろうとしている。
「あー楽しかった!今まで生きてきた中で一番楽しかったよ!」
この後の運命を康太くんは知っている。それでも、恐怖心や悲しみは一つも伝わってこなかった。
「圭太くん。本当にありがとう。いつも僕を助けてくれてありがとう。僕は世界で一番の幸せ者だよ!」
康太くんが僕に走りより抱きついてくる。僕は自分の感情を抑えきれず、康太くんを抱きしめながら涙が流れた。
「ごめん…守れなくて…本当にごめん…」
「男の子は泣いたらダメなんだよ。強くないといけないよ」
泣き崩れる僕の頭を康太くんは優しく撫でてくれる。雫さんは、僕の背中をさすってくれた。
−−−ホテルの方から誰かが近付いてくる。
気配に気付き視線を向けると、草間が立っていた。その表情からいつものような狂気性を感じられる。
「草間!」
「…」
返事がない。ただひたすらにニヤついている。




