⑥
「雫さん!康太くん!」
2人の部屋の扉を思いっきり叩く
「佐藤さん!どうしました?」
「作戦は失敗です…今すぐここから逃げましょう」
「…分かりました」
僕たちは急いで外に出る。一度この町から出なければ、草間が来る。がむしゃらに走り続けるが、ある程度走るとまたホテルの前に戻ってくる。
「なんで!町から出られない!」
「…佐藤さん」
苛立ちや焦りで混乱している僕の肩に雫さんの手が添えられる。
「ここまで本当にありがとうございます。佐藤さんの優しさはもう十分受け取ってますよ」
雫さんの言葉には、この状況から逃げられない諦めを感じた。
「まだですよ…まだ方法が…」
「佐藤さん、僕疲れちゃった」
走り疲れた康太くんがその場にしゃがみ込む。
「康太くん…」
「そうだ!私たちまだご飯食べてないんですよ。今からお店でご飯は食べれないから、コンビニでおにぎり買いましょう」
「やった!!僕、鮭のおにぎり食べたい!」
「この状況で…」
「いいんですよ。むしろ最後は普通に過ごしましょう」
雫さんと康太くんは受け止めているのだろうか。2人は手をつなぎながら笑顔で歩き始める。ふと康太くんが歩みを止めて僕の方を向く。
「佐藤さん。今から圭太くんって呼んでいい?」
「え?いいけど…」
「よし!圭太くん!ママと手をつないで」
「康太!何言ってるの!」
「だって、ずっと圭太くんと手をつなぎたいって言ってたじゃん」
「変なこと言わないでよ!」
雫さんの頬が赤らむ。その姿を見て僕も恥ずかしい気持ちになる。
「…もう!」
康太くんが僕の手を取り、雫さんと無理矢理手を握らせる。こんな時に考えることは可笑しいのだが、雫さんの手は小さく、そして、温かい。
恥ずかしい気持ちを押し殺し、僕、雫さん、康太くんという順で手を握り、歩き出した。




