③
以前の夢の中で、草間を拘束した際に様々な話しを聞いた。
その女性を執拗に追いかけ回したり、彼女の自宅前で張り込んでいたり、合鍵を作って侵入し、彼女の私物を盗んだこともあったそうだ。
結果、彼女は職場を退職した。そして、事情を掴んだ会社から草間は退職勧告をされた。
それでも、草間は自分の行動を正当化し、周囲に責任を転嫁した。そして、幸せに笑う雫さんと康太くんを見て、憎悪を滾らせ、康太くんを殺害する。
草間という男はそういう奴である。
「自分にとって大事な人が居なくなると、本当に心に穴が空きますよね。実は、僕も長年付き合ってた人と別れたから、気持ち分かりますよ」
「…そうなのか」
「婚約もしてたんですけどね。別れるキッカケって本当に分からないですよね。おかげで今は笑って過ごせますけど、それまでは何をしても色がなく、気付けば泣いてばかりいました」
僕のくたびれた表情を見て、草間はビールのお代わりを2杯頼む。
「俺が言うのも変なんだけど、今日はお互いスッキリするまで話そうか」
「いいですね!あ、お名前を聞いてもいいですか?」
「草間。あんたは?」
「佐藤です。よければ僕たちの失恋記念日に乾杯しませんか?」
「なんだよそれは」
草間は呆れたように穏やかに笑った。こんな風に笑うのは初めて見たかもしれない。大体は狂ったように笑っていたり、狂気を感じるような笑みを浮かべたりする姿しか見てこなかった。
僕たちは届いたビールのジョッキを持ち、静かに乾杯をした。




