②
でも、考えつくことは全てやってきた。もしかしたら、本当にこれが最後になるかもしれない。運命は変えられず、最後も同じ結末を迎えるかもしれない。それでも、変えられるものもあると僕は信じたい。
「雫さんの気持ちは分かります。でも、それでも、少しでも可能性があるなら、僕はその希望に賭けてみたいです」
僕の言葉に2人は笑顔で頷いた。2人の笑顔を守るために、僕は草間のいる居酒屋へと向かった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
午後2時30分。ホテルの近くにある居酒屋の前に僕は立っていた。居酒屋は何の変哲もない大衆酒場である。ここで草間は、いつも一人酒を楽しんでいる。
居酒屋に入ると、店内に人は少なく、すぐに草間を見つける事ができた。
「空いている席に座ってください!」
店員の声を聞きながら、僕は草間の隣に座る。草間は割と小柄である。突然見ず知らずの男が隣に座ったことに少し驚いている様子だった。
「お隣いいですか?」
「…はぁ」
愛想のよくない返事を返してくる。隣に座られたことへの嫌悪感がヒシヒシと伝わってくる。
「ここにはよく来るんですか?」
「…何すか突然」
「僕、仕事の都合ですぐ近くのホテルに泊まるんです。ここら辺には初めて来たので、どんな町なのかなってフラフラしてたんですよ」
「…はぁ」
今すぐにでも居なくなってほしそうに、草間は適当に相槌を打つ。
「…お兄さん、もしかして失恋しましたか?」
僕の言葉に、ビールを飲もうとしていた草間の手が止まる。
「何だか辛そうな表情だったから、そういう時って大体失恋や人との別れじゃないですか」
「お前失礼だな。会ったばかりの人間にそんなこと言うもんじゃないだろ」
「すみません。でも、見ず知らずの人間だからこそ、吐き出せるものもありますよね」
僕の邪気のない笑顔を見て、草間はビールを一気に飲み干した。
「…ずっと好きだった女がいたんだ」
「どこで知り合ったんですか?」
「同じ職場でな。思い切って告白したらあっさり振られた」
「そうだったんですね…」
草間のこの話は…嘘だ。
草間に好きな人がいることは知っている。同じ職場の女性ということも。しかし、そんな純愛的な話ではない。
草間は、その女性を何年もストーカーしていたのだ。




