①
改めて強く決意し、僕は雫さんと康太くんに向き合った。
「今回もこの時間ですね」
「そうですね。いつもと同じこの時間。この後、草間がやってきます」
僕が繰り返し見る夢の状況を説明すると、
①午後2時30分、雫さんと康太くんと会う。2人はホテルのチェックインに向かう。
②午後3時、ホテル近くの居酒屋から草間が出てくる。草間もホテルのチェックインを行う。
③午後6時、雫さんと康太くんは外食に向かう。その途中で草間と出会う。
④午後7時、草間は雫さんと康太くんを追跡。2人が公園に寄ったところをねらい、康太くんを暴行し、殺害する。
基本の流れはこうである。例えば、2人のチェックインのタイミングをずらしたり、外出に行かなかったりしたとしても、草間の行動や言動が康太くんの死につながってしまう。
一度草間を拘束したことがあるが、なぜか康太くんが引き寄せられるように草間に近づいてしまうという現象も起きた。そのため、2人を拘束したが、拘束が原因で康太くんが亡くなることも起きた。
そうして、あらゆる方法を模索し、試してみたが、一度も成功したことはなかった。
「雫さん、僕は試してみたいことがあります」
「何ですか?」
「恐らく、草間の執念というか怨念というか、康太くんに対するマイナスな思いの強さが引き起こしているのではと考えたんです。それならば、僕が草間の心の闇を払えれば、康太くんへの殺意は無くなるのではないかと」
「…つまり何をするんですか?」
「草間と友達になります」
僕の発言に2人は目を丸くする。
「変なこと言ってるのかもしれませんが、今までは物理的な方法だけを試しました。しかし、全てがうまくいかなかった。だからこそ、そうではない方法を試す必要があるんです」
僕の熱量に2人は少し引いている。
「…佐藤さん!ありがとう!」
「いつも助けてくださっている佐藤さんの言葉ですから、私たちは信じて行動します」
「2人とも、ありがとうございます」
「でも…」
雫さんが言いかけた言葉を止めた。
「雫さん?」
「いえ…ただ、今までは夢の中で助けてもらっていました。でも、今回は状況がちがう。だから、もしかしたら、もう二度と佐藤さんには会えないのではないかなと感じてしまって…」
雫さんの言葉に、根拠もなく納得している自分がいる。今回は現実の中で起きている。言葉は悪いが、夢は何度でも挑戦できる。しかし、現実はそうはいかない。




