第1話: 緑の咆哮と目覚めの霧
目を覚ますと、湿った土の匂いが鼻を突いた。俺、佐藤太郎は、さっきまでオフィスのデスクで残業中だったはずだ。トラックに轢かれた? いや、記憶がぼんやりしてる。体が軽い……ってか、なんだこの感覚? 手を見ると、細くて筋張った腕。服はボロボロのTシャツとジーンズのまま。周りは巨大なシダ植物が密集したジャングル。空は薄曇りで、遠くから低いうなり声が響く。
「ここ、どこだよ……夢か?」
立ち上がろうとして、足元に転がる岩に躓いた。岩? いや、化石みたいな骨だ。恐竜の骨? 待てよ、俺の知識じゃこれ、ティラノサウルスの大腿骨に似てる。パニックが胸を締め付ける。スマホを探すが、ポケットは空っぽ。代わりに、手のひらに奇妙な温かさ。掌を広げると、淡い青い光が浮かぶ。なんだこれ? 転生特典かよ? ファンタジー小説みたいに。
突然、茂みがガサガサ揺れた。出てきたのは、緑の鱗に覆われた小型の恐竜。ヴェロキラプトル? 鋭い爪が光ってる。奴は俺を睨み、喉を鳴らす。
「ヒッシィィ……」
俺は後ずさり。「おいおい、待てよ! 俺、肉食系じゃないんだぜ!」
本能的に手を突き出すと、青い光が爆発。風のような力が奴を吹き飛ばした。魔法? いや、超能力? 奴は木にぶつかり、逃げてく。息を吐いて、辺りを見回す。巨大な木々が天を突き、葉の隙間から陽光が差し込む。川の音が聞こえる。まずは水だ。歩き出すと、足跡が泥に残る。恐竜の足跡……デカいぞ、これ。
川辺に着くと、水面に映る自分の顔。20代のままだけど、目が輝いてる。異世界転生か。恐竜時代? 白亜紀とか? 知識が役立つかも。魚影が見える。手で掬おうとして、失敗。青い光を使って、水を浮かせる実験。成功! 魚が飛び出してくる。
「よし、これで食えるな。原始生活スタートかよ。」
焚き火を起こすのに、光で火を点ける。魚を焼く匂いが広がる。夜が近づき、星空が広がる。遠くで咆哮。トリケラトプスの群れか? 俺はこの世界で生き抜く。明日は拠点を作ろう。転生の理由はわからないけど、面白くなってきたぜ。