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05 Cheer for Love

 サティーナは静かに立ち上がり、複雑な表情で彼女を見下ろした。

 尻尾を軽く揺らしながら、穏やかで、どこか意味ありげに言った。

「答えはもうはっきりしているじゃない。あとは、愛理ちゃん自身の問題よ」

 それから、困ったような愛理の顔を見て、小さくため息をつき、優しく微笑んだ。

「今すぐ行動しろなんて言わない。でも、自分の気持ちくらい、ちゃんと整理しなきゃダメだよ?」

 愛理はスカートの裾をぎゅっと握りしめ、しばらく黙ったあと、少し頑なな表情で顔を上げた。

「サティーナ姉……もしかして、何か言いたいことがあるの?」

「言いたいことは簡単よ。」

 サティーナは尻尾をふわりと揺らしながら、意味ありげな笑みを浮かべ、ゆったりと立ち上がった。

「真一は確かにいい男だけど、我のタイプじゃないの。だから、汝らと取り合うつもりなんてないわ。」

 その言葉を聞いた瞬間、愛理とリアは同時に呆然とし、驚いたようにサティーナを見つめた。心の中にはホッとした気持ちと同時に、なんとも言えない──ほんの少しだけ虚しさのような感情も湧いてきた。

「それじゃ、二人とも。」

 サティーナはぐーっと伸びをして、目を細め、キツネのような笑みを浮かべる。

「余計な心配はしないでよね。さ、頑張りなさい。」

 夕日はすでに完全に地平線の彼方へと沈み、深い藍色の夜がテラスを包み込み始めていた。涼しい風がそっと吹き抜ける。

「ただいまー!」

 階段の方から、突然真一の声が響いた。手にはいくつかのドリンクを持ち、明らかに急いで走ってきた様子だった。

「おっ、来た~!」

 サティーナの目がキラリと輝き、嬉しそうに真一のもとへ駆け寄る。まるで獲物を見つけた猫のようにぴったりと寄り添い、腕に絡みついた。

「やっぱり真一くんが一番頼りになるわ~。今日は付き合ってくれて本当にありがとう。一人だったら寂しくて死んじゃうところだった!」

「え、えっと……」

 突然の甘えた仕草に、真一は明らかに動揺して一歩後ずさる。しかし、サティーナは逃がさない。頭を肩に軽くすり寄せ、尻尾もご機嫌に揺れている。

「ちょっと! サティーナ姉!」

 二人の距離の近さに、愛理は思わず足を踏み鳴らし、慌てて駆け寄った。

「そんなのダメだよ! 真はあなたの……」

 途中まで言いかけて、自分が何を口走ろうとしたのかに気づき、顔を真っ赤に染めてしどろもどろになりながら続けた。

「ち、違うっ! あなたのものじゃないし! だ、だからダメ!」

「あらあら~?」

 サティーナはニヤリと眉を上げ、愛理をからかうようにじっと見つめながら、尻尾をゆらゆらと揺らす。

「なにが“私の”じゃないのかしら、愛理ちゃん? わかんな~い。」

「な、なんでもないよっ!」

 愛理は慌てて顔を背け、小声でブツブツと呟く。

「この鈍感……あんなにからかわれているのに、全然気づかないなんて、ほんっとバカ……」

 その様子を見て、リアは思わずふふっと微笑んだ。頬を少し赤らめながらも、優しい声で言う。

「サティーナ、もう愛理ちゃんをからかわないで。真一くん、あんなに走ってきて、きっと疲れているわ。」

「ちぇっ、わかったわよ~。」

 サティーナはぷいっと唇を尖らせ、しぶしぶ腕を離すと、不当な扱いを受けたかのように呟いた。

「ねぇ真一くん、あたしのこの気遣い、ちゃんと感謝しているでしょ?」

「え、えっと……ありがとう……かな?」

 その瞬間、愛理が勢いよく彼の手からドリンクを奪い取り、ぷくっと頬をふくらませた。

「ぼーっとしてないで、早く手を洗ってきなさいよ!ほこりまみれなのだから、もうっ!」

「ああ、わかった……」

 真一は苦笑いを浮かべ、素直に向きを変えて水源の方へ歩いていった。

 去っていく彼の背中を見送りながら、サティーナはふっと微笑み、尻尾をゆるやかに揺らしつつ、少し含みのある口調で言った。

「愛理ちゃん、リア。今日は本当にいい天気だと思わない?」

 愛理とリアは一瞬驚いたように目を見合わせ、すぐに視線を伏せて、小さくうつむいたまま返事をしなかった。

 サティーナはそれ以上何も言わず、静かにテラスへと歩みを進め、遠くの夕暮れに目を向けながら、そっと囁いた。

「行こう。夜風が吹き始めるわ。」

 数人は笑い声を交えながら帰路についた。夕焼けの余韻が彼らの背をやさしく照らしていた。その笑い声は一見楽しげに響いていたが、その奥には誰にも言えぬ思いが静かに潜んでいた。

第19章も無事に翻訳完了!これで第4巻もいよいよ本編に突入です。舞台は北米要塞、そしてついにライバルチームもここで登場します。

特に今回登場する女性受付官と、以前登場した特使なんですが、もともとはただのモブキャラ扱いの予定だったんです。でも他キャラとの関係性をちょっと設定しただけで、なんか一気にキャラとして立ってきて、自分でもびっくりしてます(笑)


例えるなら『名探偵コナン』のキャラの人間関係みたいな感じで、普通の脇役でも誰かと関係ができると一気に存在感出る、みたいな。こういう関係性の設定、やっぱり作ってて楽しいですね!

さて、この2人が誰とどう関わるのか、みなさんぜひ予想してみてください。


はい、というわけで今回の章はここまで!次の章は8日後の7月17日に公開予定です。ぜひお楽しみに!

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