04 Journey to the Heart
少しして、サティーナは再び真一の肩を軽く叩き、口調を変えた。
「さて、真一。みんな喉が渇いているでしょ?何か飲み物があるか見てきてくれる?」
「あ?……うん、わかった。見てくるよ」
真一の姿が遠ざかると、サティーナはゆっくりと振り返った。顔の笑みは消え、穏やかで優しい表情に変わっている。尻尾も、いつの間にか静かに隠れていた。
「愛理ちゃん、リア」
彼女は真剣な声で呼びかけた。
「少し話があるの」
愛理は睨みつけるようにサティーナを見て、ぷんすかしながら隣に座った。
「なによ?また私とリア姉をからかうつもり?」
「もちろん違うわ」サティーナはくすくすと笑いながら首を振り、それから真剣な顔になって言った。
「みんなで、真一のことについて話したいのよ」
リアの顔はたちまち赤くなり、俯いて小さな声で囁いた。
「サティーナ……何のこと?」
「とぼけないで、リア」サティーナは彼女の隣に腰を下ろし、からかうような優しい目で彼女の手の甲を軽く叩いた。
「リアが真一のこと好きなのなんて、盲目でも分かるわ」
「わ、私……」リアはさらに動揺し、もっと深く俯き、蚊の鳴くような声で呟いた。
「私はただ……」
「告白する勇気がないだけでしょ?」サティーナは微笑みながらも、その声には逆らえない優しい励ましがこもっていた。
「怖がることないわよ。真一はそんな意地悪な人じゃないもの。このまま隠し続けたら、チャンスはどんどん減っていっちゃうわよ。」
リアは驚いたように顔を上げ、苦しげな青い瞳でサティーナを見つめた。
「でも……もし言ったら、真一くんが……」
「何が怖いの?」サティーナは穏やかに微笑み、その声は毅然としていながらも優しかった。
そしてそっとリアの肩に手を置き、優しく背中を押した。
「自分の魅力と気持ちを信じなさい。伝えなきゃ、彼の答えなんて分かるわけないでしょ?」
リアは恥ずかしそうに頬を染め、再び俯いた。
その隣で、愛理も静かに俯いた。先ほどまで怒りを浮かべていた顔は徐々に曇り、小さな声で呟いた。
「じゃあ……私は?」
サティーナは顔を向け、考え込む愛理をじっと見つめた。その瞳には優しさと、ほんの少しいたずらっぽさが宿っていた。
「愛理ちゃん、自分の真一への気持ち、本気で考えたこと、ある?」
その言葉に、愛理は呆然と顔を上げ、困惑した表情でサティーナを見つめた。
「気持ち?そんなの、もちろん……心配だよ。だって幼なじみだし、一緒に育ったし、私が真のことを大事に思うのは当たり前じゃん」
「本当にそれだけ?」サティーナは意味ありげに微笑み、眉を上げた。
「ただ心配しているだけ?」
愛理は一瞬言葉に詰まり、俯いて唇をきゅっと結び、小さく呟いた。
「だって、他に何が……」
サティーナはそっと彼女の隣に寄り、指先で愛理の額をつつき、少し呆れたように、でもどこか甘えるような口調で言った。
「この鈍感さん。ただの『気遣い』だけじゃないよ〜。真が他の女の子と仲良くしているとき、めっちゃ機嫌悪くなっているの、自分で気づいている?」
愛理は反論しようと眉をひそめたが、脳裏には自然とそんな場面がいくつも浮かんできた。
顔を上げ、困惑しながら答えた。
「だって……いじめられたり、騙されたりするのが嫌なのだもん!真って昔からおバカで、いつも私が心配してなきゃダメだったし」
「あら、それも可愛い言い訳ね。」サティーナはくすっと笑って首を振ったが、その目はますます優しさに満ちていた。
「確かに心配しているのは分かるけど、それだけじゃないでしょ?」
「え……?」愛理は目を見開き、頬をほんのり染め、頭の中はぐちゃぐちゃだった。
サティーナはそっとしゃがみこみ、目線を合わせて、冗談めいた声ではなく真剣な口調で囁いた。
「本当はね、もっと彼の心のそばにいたいって、思っているのじゃない?」
愛理は口を開きかけたが、結局、何も言えなかった。
「気づいてないかもしれないけど、ずっと怖かったのだよね。いつか真が遠くへ行っちゃって、自分のものじゃなくなるのじゃないかって」
サティーナの声は優しく、だけどどこか力強さを含んでいた。
「自分に嘘つかないで、愛理ちゃん。本当の気持ちはひとつしかないのだから。それを口にしなきゃ、どうなるかなんて分からないよ? もし真一が本当に他の子のものになっちゃったら、絶対後悔するのだから」
愛理は呆然としながら俯き、無意識にスカートの裾をぎゅっと掴んだ。
真一との思い出が次々と蘇り、胸の奥に苦しい感情が広がっていく。
そして、ぽつりと呟いた。
「私……真を失いたくない……」
今日も第2部の「魔王決定戦編」に登場するPK戦とレースバトルの内容をさらに細かく詰めてました。PK戦の方は、主人公チームの隊員たちの設定をもっと人間味のあるものに調整して、さらにそれぞれの過去や来歴も追加。というのも、そもそも「主人公以外に人類がいない世界」にどうやって軍人たちが存在するんだよっていう問題があったので(笑)
最初は「彼らはVRゲームの中の存在だった」みたいな設定も考えたけど、やっぱりそれはちょっと無理があるなと。
あと、レースバトルの方も最初は自分が昔から好きな某ゲーム系シリーズの第3作に出てくる対戦システムみたいな感じにしたいと思ってて、そのイメージを膨らませてたんですが、今回ようやく競技の形式やルールが固まりました!あのスピード感の中でコンボ技を連発する熱さを再現できたらいいなと。
バトルの詳細な流れまではまだ考え中なんですが、物語全体の流れはかなりハッキリしてきました!
まだまだ面白いアイデアが湧いてきそうな予感。どうぞお楽しみに!