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39 Sunlit Parade

「そうだ。」

 デイモンはゆっくりと視線を巡らせ、全員の顔を見渡した。

「龍王様と正面から渡り合い、討ち取ることができる存在――そんな者が凡人であるはずがない。」

 ジェイソンの掌がぎゅっと握りしめられ、指先から淡い聖光がにじみ出る。

「人間が……そこまでの力を? 四天王を倒すほどの……?」

 アイリーンは静かに彼の肩に手を置き、慰めるように軽く叩いた。

「だが、それでも東アジア要塞は長くはもたないだろう。」

 デイモンは低く呟いた。

「最新の報告では、幻獣軍がすでに外郭防衛線を突破し、残る守備隊の崩壊も時間の問題だという。」

 重苦しい緊張が空気を包み込む。

 サティーナはしばし沈黙し、それから小さく笑った。

「ふふ……それは、ちょっと意外ね。」

 その瞳には、どこか戯けたような光が宿っていた。

「蓮華城がまだ陥落していないとなると、魔王軍の上層部はきっと我を責めているのでしょう?」

「いや、まったくの逆だ。」

 デイモンの声音は穏やかで、水面のように静かだった。

「上層部は貴方様の撤退を責めるどころか――むしろ、その結果を黙認した。」

「……何ですって?」

 サティーナの目が細まり、瞳の奥に冷たい光が宿る。

「彼らは追及せず、むしろ意図的にこの展開を受け入れたのです。」

 デイモンの言葉に、その場の空気が一瞬で張り詰め、全員が息を呑んだ。

「……面白いわね。」

 サティーナはくすくすと笑い、デイモンをまっすぐに見据える。

「やはり、魔王軍の内部で何かが起きているのね。」

 遺跡の中では、光と影が交錯し、誰もが思索と緊張に沈んでいた。

 空気は凍りつくように静まり、まるで時間そのものが止まったかのようだった。

 深い闇の底で、戦局の暗雲はますます濃さを増していく。

 その沈黙を破ったのは、ヴィクトリアだった。

「つまり……彼らには、もっと重要な計画があるということかしら?」

 集団の中央に立つデイモンは、魔法の光に照らされた真紅の瞳を冷たく光らせ、静かに頷いた。

「その通りだ。魔王軍の次なる一手は、もはや単なる個別の戦ではない――」

「どういう意味……?」

 愛理は思わず問い返した。ツインテールがわずかに揺れ、その瞳には不安の色が宿る。

 デイモンはゆっくりと顔を上げ、場にいる全員を見渡した。

 まるで、これから告げる衝撃の真実を受け止める覚悟があるかを確かめるように――。

「魔王陛下が直々に命じられた――魔王軍上層部は、新たな戦略方針をただちに実行せよ。すなわち……総攻撃だ。」

 低く響く声が場の空気を震わせた。

 瞬間、場が凍りついた。遺跡の石壁までもが、その言葉の余韻を反響させているようだった。

「全軍……攻撃?」

 リアの青い瞳が見開かれ、指が反射的に魔法杖を握りしめた。その目に恐怖が浮かぶ。

 傍らのサティーナも反応し、赤い瞳がわずかに細まった。珍しく驚きを滲ませている。

「……魔王陛下が、自ら命を下されたというのですか?」

 彼女はデイモンの表情を探るように首を傾げた。

「これまで魔王陛下は戦の進行を黙認するだけで、決して介入されなかった……。それが今、自ら全面戦争を命じるなんて……」

 サティーナの声は戸惑いと困惑を含み、低く震えた。彼女は魔王の沈黙をよく知っている。だからこそ今回の決断が異例で、あまりにも重いことを理解していた。

 真一は眉をひそめ、しばし沈黙したのち、ゆっくりと目を上げた。その瞳には深い光が宿っていた。彼は息を吸い込み、不安を呑み込むようにして静かに問うた。

「具体的な作戦は? 魔王軍は、どうやって攻め込むつもりなのだ?」

 デイモンは一瞬考え込み、やがて重々しく口を開いた。

「魔王軍の計画は、まず圧倒的な兵力で北米の要塞を陥落させ、人類の主力と補給線を断つことだ。その後、全軍を結集して東南アジア要塞を総攻撃し、人類の生存の希望を完全に断つつもりだ。」

 その言葉に、全員の表情が一変した。

「な、なんだって!?」

 ジェイソンは血管が浮き上がるほど拳を握りしめた。

「レサージス・シティ……」

 アイリーンは眉をひそめ、眼鏡を押し上げながら鋭い視線を向ける。

「レサージス・シティは、そう簡単には落ちないでしょう。でも……全軍を投入されたら、持ちこたえられるのは時間の問題です。」

「くそっ……」

 マコアが低く唸り、筋肉を強張らせて拳を握る。その姿は、まるで戦火に倒れていく無数の兵士の幻影を見ているかのようだった。

 ヴィクトリアは静かに視線を落とし、胸元の金属の家紋飾りを指先でなぞった。

「もしレサージス・シティが陥落すれば、人類の防衛線は崩壊する。次は――蓮華城が標的になるわ。」

 愛理の心臓がどくんと鳴る。

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