表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/36

24 ABYSS -アビス-

 高くそびえる古木の隙間から皎々たる月光が地面に降り注ぎ、合同チームの輸送機は密林の空き地へとゆっくり着陸した。ハッチが開き、真一が真っ先に降り立つ。ブーツは柔らかな土に沈み、空気には湿った苔の匂いが漂っていた。

 装備を整えた一行は、細い小径を進んでいく。夜の闇の中、虫の声と風のざわめきが重なり合い、揺れる木々がまだらに光と影を落としていた。やがて彼らは、苔と蔓に覆われた岩壁に辿り着く。その表面にはかすかに古代の扉の輪郭が浮かび、石の隙間からは微かな青い光が漏れ、地下遺跡の入口を示していた。

「やっと着いたね……」

 愛理が伸びをする。薄茶色のツインテールがふわりと揺れ、顔には興奮の笑みが浮かんでいた。

「このジャングルを抜けるのに随分時間がかかったよ。早く中を見てみたいな!」

「油断は禁物だ」

 真一は腕を組み、短いダークブラウンの髪が月光を受けて淡く光った。

「情報によれば、この遺跡はそう単純なものじゃないらしい」

「入口はこです」

 アイリーンが眼鏡を押し上げ、手際よく携帯端末を操作する。指先が画面を叩くと、軍から提供された地図が素早く表示された。

「レーザースキャンで遺跡のおおまかな構造が判明しました。最下層の中央ホールが集合地点です」

「つまり、奥まで潜らなきゃいけないってことね?」

 サティーナは片眉を上げ、赤い瞳を輝かせる。

「面白そうじゃない」

 ヴィクトリアは小さく笑い、細い指で長い髪をくるくると弄んだ。

「遺跡探検には驚きがつきもの。思いもよらない“サプライズ”が待っているかもしれないわ」

「待ちきれないな!」

 マコアは腕を振り上げ、隆々とした筋肉を誇示するように見せつけ、明るく意気込みを語った。

 リアは皆の会話に耳を傾けながらも、周囲に漂うジャングルの気配へと意識を研ぎ澄ませていた。隣に立つエリカは沈黙を保ったまま、そっと腕を伸ばしてリアの肩に触れ、落ち着くように無言で合図を送る。

 その時、ヴィクトリアが一歩前に出て、鋭い眼差しで仲間たちを見渡し、力強く告げた。

「計画通り、二手に分かれて行動します。真一チームは中央で前後の援護、ジェイソンチームは後衛で奇襲に備える。そして先頭は私が務めます」

 ジェイソンは鼻を鳴らし、顎をわずかに上げて言った。

「足を引っ張らなければいいがな」

 愛理はくすっと笑った。

「大丈夫、絶対に期待を裏切らないから」

「進む前に、一つ忠告しておきます」

 ヴィクトリアの笑みは消え、眼差しが一層鋭さを帯びる。

「この遺跡はまだ完全に解明されていません。内部は複雑で、罠が仕掛けられている可能性が高い。一見安全に見える場所でも、危険は潜んでいます」

「さらに、異世界の神の降臨による未知の影響も考えられます」

 アイリーンは眼鏡を軽く押し上げ、冷静に言葉を継いだ。

「スキャンで生体反応は検出されたが、種類までは特定できなかった。全員、常に警戒を怠らず、状況に応じて臨機応変に対応せよ」

「そうだな」真一は腰の装備袋を握りしめ、低く言った。

「各員、周囲の異常に注意し、速やかに報告しろ」

 皆はうなずき、それぞれ隊列を整えて動き始めた。

 愛理が一歩前に進み、目を閉じる。しばらくして瞼を開き、明るい瞳で微笑んだ。

「入り口付近には、今のところ生き物も、明確な敵意も感じられません」

 ヴィクトリアは扉へ近づき、刻まれた古代のルーンを一瞥する。指先で石壁のわずかな窪みを押し込んだ。

「情報どおりなら……これが仕掛けのはず」

 その瞬間、扉の紋様が淡く光を帯び、地の底から微かな振動が伝わってきた。重々しい石の扉がゆっくりと開き、遺跡の奥へと続く暗い階段が現れる。

 古く神秘的な気配が押し寄せ、まるで太古の囁きが耳元でこだまするかのようだった。

「では――冒険の始まりだ」ヴィクトリアは低く呟き、先頭に立って暗闇へ踏み出した。他の者たちもすぐに続く。

 背後で石の門が静かに閉じ、外の月光を遮断した。隊員たちは照明器具を起動し、柔らかな光が前方の道を照らす。湿った空気には、かすかな腐敗の匂いが混じっていた。

 ヴィクトリアは鋭い目で周囲を警戒しながら進み、手を上げて一行を制した。

「地面に仕掛けがある」落ち着きつつも揺るぎない声で告げる。

 皆が息をのむ中、足元にはわずかに盛り上がった不規則な石のブロックがあり、不吉な気配を漂わせていた。

「罠?」

 愛理が小首をかしげ、好奇心を帯びた声を漏らす。

 ヴィクトリアはしゃがみ込み、石の表面を観察した。小石を拾い上げ、軽く投げ放つ。

 直後、鈍い音とともに両側の壁から鋭い槍が飛び出し、石を粉砕して反対の壁に突き刺さった。槍先は薄明かりの中で冷たく光る。

「今踏み込んでいたら、命はなかったでしょう」

 ヴィクトリアは立ち上がり、冷ややかな眼差しで一行を見渡す。

「私から離れるな」

 サティーナは腕を組み、くすりと笑った。紅い瞳には興味の色が宿る。

「ふふ……ますます面白くなってきたわね」

「自分まで巻き込まれるなよ」

 真一が淡々と告げる。その声音は軽やかだったが、確かな警告が滲んでいた。

 一行はヴィクトリアの指示に従い、慎重に仕掛けを避けつつさらに奥へと進む。

みなさん、こんにちは!また新しい章のスタートです。実は最近、Grokにどハマりしてしまって、もう寝食を忘れるレベルなんですよね(笑)。他のAIと比べても自由度が高くて、より刺激的なことができちゃうからつい……そのせいでこっちの執筆が全然進まなくて、本当に反省してます!でも来週こそは翻訳と第26章の執筆をちゃんと進めますので、ご安心を!


さて、第22章ですが、いよいよ主人公たちが地下遺跡に潜入します。そして「お姉さん系能力者」ヴィクトリアの秘密がついに明らかになります。お楽しみに~!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ