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23 Dash Cool Toward the End

 窓から差し込む朝の光に包まれ、真一はゆっくりと目を開け、深く息を吸い込んだ。今日はついに、任務へ正式に出発する日だった。

「出発前に、もう一度装備の確認をしておこう」

 そう呟きながら、真一は体を起こした。

 昨夜の準備で、戦闘服のポケットには装備品がきちんと収められており、愛理の真新しい銀色の二丁拳銃は朝の光を受け、ほのかに輝いている。サティーナの鎧は深い暗い光を放ち、リアのリストバンドも朝日を浴びてわずかに煌めき、神秘的な雰囲気を漂わせていた。

 30分後、4人は完全武装のまま集合場所へと到着した。

 そこには、同じく任務を請け負ったジェイソンのチーム、そして数日前に出会ったばかりのヴィクトリアの姿もあった。

 ジェイソンは腕を組み、唇に皮肉げな笑みを浮かべ、短いブロンドの髪が朝の光を受けてかすかに輝いていた。彼はゆっくりと真一のもとへ歩み寄り、軽薄そうな表情で見上げると、からかうように言う。

「よう、ミスター・シンイチ・レイノ。まだここにいたのか? 怖くて夜のうちに逃げ出したんじゃないかと思ってたぜ」

 それを聞いた真一は、軽く眉を上げ、冷静ながらも鋭い口調で返した。

「任務が始まったばかりで、相手が土壇場で逃げ出すと思うのか? もしかして、自信がないのは君のほうなんじゃないか?」

 ジェイソンは鼻を鳴らし、口元の笑みをさらに深める。まさに反撃しようとしたその瞬間、背後から呆れた声が響いた。

「ジェイソン、子供みたいなことはやめなさい」

 アイリーンは眼鏡を鼻の上に押し上げ、真一に申し訳なさそうに微笑んだ。

「気にしないで。昨日、興奮しすぎて寝られなかったから、今ちょっとはしゃいでるだけよ」

「アイリーン!」

 ジェイソンは振り返り、不満げに睨みつけたが、すぐにいつもの自信満々な態度に戻る。右手を軽く振ると、背後に淡い黄金の聖光が現れ、その姿をより際立たせた。肩をすくめ、口元に笑みを浮かべる。

「ワクワクしてるのさ。こんな機会、滅多にないからな。この任務には万全のコンディションで臨まないとな」

 アイリーンは額に手を当て、小さくため息をつきながら呟く。

「結局、興奮しすぎて眠れなかったくせに……」

 真一はそんな二人のやりとりを眺めながら、口元をわずかに緩め、瞳にかすかな期待の色を宿していた。この任務は困難に満ちているだけでなく、どうやらかなり面白いものになりそうだ。

「あら、なんだか随分と賑やかね~」

 物憂げながらも、どこか遊び心を含んだ声が横から聞こえ、真一が振り返ると、ヴィクトリアがゆっくりとこちらへ歩いてきていた。彼女の装いは前に会った時とほとんど変わらなかったが、腰にはタクティカルベルトを巻き、ポケットには正体不明の装備がぎっしりと詰め込まれている。ダークブラウンの長い髪は無造作に肩に垂らされ、アイスブルーの瞳はどこか狡猾そうにきらめいていた。

「ヴィクトリアさん」

 真一は丁寧にうなずいた。

 それを聞いたヴィクトリアは、すぐに不満そうな顔をした。両手を腰に当て、唇を少し尖らせる。

「は?『さん』って何よ?よそよそしいじゃない!『姉上』って呼びなさいよ!」

 真一は眉をひそめ、困ったように言った。

「それは……ちょっと……」

「何が問題なの?」ヴィクトリアはニヤリと笑い、一歩近づいてわざと声をひそめる。

「もしかして……恥ずかしいの?」

 真一は無意識に一歩後ずさるが、冷静さを保った。

「別に。」

「なら、ほら、呼んでよ〜『姉上』って。機嫌が良ければ、任務中に守ってあげるかもよ?ねぇ、真ちゃん〜」

 絡まれたら簡単には逃げられないと悟った真一は、小さくため息をついた。少し考えた末、ようやく小声で呟く。

「……姉上。」

「え〜?聞こえなかったわ〜!」

 ヴィクトリアはさらに嬉しそうに笑いながら近づき、その氷のような青い瞳に狡猾な光を宿す。

 真一は諦めたようにため息をつき、そっと視線を逸らして、再び呟いた。

「……姉上。」

「よくできました〜♪」

 ヴィクトリアは満足げにうなずき、真一の肩を軽く叩いてニヤリと笑った。

 その様子を見て、愛理、サティーナ、そしてリアは、どこか複雑で微妙な、しかし笑いをこらえたような目配せを交わす。

 だが、その和やかな空気を切り裂くように、壇上から威厳のある低い声が響き渡った。

「全員、揃ったな。」

 一同の表情が一瞬で引き締まり、冗談めいた空気は消え、皆がその声の主へと視線を向ける。

 壇上にはマスク総司令官が凛とした姿勢で立ち、鋭い視線で戦士たちを見渡しながら、低く告げた。

「よし、これより任務を開始する!」

 その声と同時に、周囲の兵士たちが道を開け、大型輸送機がゆっくりと着陸してくる。

 巨大な機体は重々しい影を落とし、甲板上の金属は朝日を受けて冷たく光った。

 やがてハッチが開き、中の暗く深い通路が、まるで深淵のように静まり返り、戦士たちを待ち構えていた。

 もはや、誰も口を開かない。

 全員が目を合わせ、言葉はなくとも意思は通じている。

 そして次の瞬間、彼らは無言のまま、冷たい金属の通路へと足を踏み出した。

 この瞬間、運命の歯車が静かに動き出す。

 未知なる戦いの幕が、いま、上がった。

はい、というわけで今回の章はここまで!次の章は8日後の9月9日に公開予定です。ぜひお楽しみに!

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