22 The Calm before the Storm
真一は珍しい変換素材を選び、リアは慎重に強化リストバンドを手に取った。アリソンは端末の説明画面を見つめ、目を輝かせる。
「これ、魔晶石製なの。周囲の魔力を効率よく集めて、魔法の威力を大幅に引き上げられるわ。しかも防御性能も強化されていて、魔法を発動するときの制御精度も格段に良くなるの」
「このリストバンド……すごく良さそう」
リアは精巧な彫刻と滑らかな文様をじっと見つめ、静かに呟いた。
「だったら受け取って」
真一は微笑んだ。
「君の魔法支援はとても重要だからな。防御が厚ければ、それだけ安心できる」
リアは驚いたように目を見開き、ふと顔を赤らめ、小さくうなずいた。
愛理は興奮を抑えきれず、銃の陳列棚へ駆け寄ると、自分の銀色の二丁拳銃によく似たデザインの拳銃を見つけた。胸の高鳴りを隠せず、すぐさまアリソンのもとへ駆け寄る。
「アリソン姉、この二丁、私の銀の二丁拳銃とそっくり! これって、どんな特別な武器なのですか?」
アリソンは小さく頷き、端末の説明に目を通してから口を開いた。
「これは魔晶石が埋め込まれた特別な一対の拳銃よ。引き金を引いた瞬間に周囲の魔素を自動で凝縮して、銃身を通じて変換・発射するから、従来の弾丸は必要ないの」
ひと息置いて、さらに説明を続ける。
「魔晶石の特性で、魔素の変換効率が上がるだけじゃなく、攻撃力も大幅に強化できるわ」
それを聞いた愛理の瞳がさらに輝き、興奮気味に尋ねた。
「これ、もらってもいいですか?」
アリソンは優しく微笑み、軽く頷いた。
「もちろん。愛理ちゃんにぴったりの装備だと思うわ」
愛理は喜びを隠しきれず、顔を輝かせると、すぐさまその拳銃を手に取った。
「やった!ありがとう、アリソン姉!」
と満面の笑みを浮かべる。
傍らにいたサティーナは静かに長剣を手に取り、じっと眺め続けた。そして思わずため息をつき、口を開いた。
「壊滅的な災害からたった二年で、人間が我らの世界の技術をこれほど巧みに使いこなすとは……本当に驚かされるわ」
彼女は剣から発せられる強大な魔力を感じ取り、どこか考え込むような表情を浮かべた。
しかしすぐに首を振り、そっとつぶやく。
「でも……まだ本当に欲しいものは見つかっていないみたいね」
アリソンは、皆が装備を選び終えるのを見届け、満足げに頷いた。
「みんな、いい選択をしてくれたわ。ここにある装備は、戦闘エリート用に用意されたものよ。攻撃力だけじゃなく、防御や支援もきちんと考えないとね。きっと、次の任務で役に立つはずよ。」
自由時間には、アリソンがみんなを案内し、ジムや温泉、娯楽室など、要塞内のさまざまな施設を見て回った。
「こんなところに、こんな立派なレジャー施設があるなんてな。」
真一は辺りを見回し、感心したように言った。
「戦士だって、特に高難度の任務の前には、ちゃんとリラックスしないとね。」
アリソンは微笑んでそう返した。
「リア姉、温泉行こうよ!あそこのスイーツ、すっごく美味しいんだって!早く食べに行こう!」
愛理は目を輝かせてリアの手を取った。
リアは苦笑いし、小さくため息をついた。
「わかった、そこまで言うなら……」
と言い終わる前に、愛理に手を引かれて温泉施設へと走って行った。
サティーナは、穏やかな音楽が流れるバーに一人で入り、ゆったりとカウンターにもたれ、酒を一杯注文して静かなひとときを楽しんだ。
グラスを手に取り、ゆっくりと回しながら目を閉じ、一口飲んで、小さくつぶやく。
「ふふっ、悪くない味ね。」
バーテンダーが笑顔で新しく作ったカクテルを差し出すと、サティーナはそれを口に運び、満足げに微笑んだ。
「うん……いい出来だわ。」
一方その頃、真一は空いた時間を使って装備の整理を行い、迫る任務に備えて準備を整えていた。
「今回の任務は甘く見ちゃいけない。絶対に失敗は許されない……」
そう呟きながら装備を点検し、危険な状況でも事故が起こらないよう、能力を使って素材の調整も行っていく。
しかし、空気中の元素を変換しようと試みるものの、何度やっても失敗を繰り返した。どれだけ集中しても状況は好転せず、まるで何かの力に妨げられているかのようだった。
「……どうやら、能力は普段通りの状態に戻ったみたいだな。」
真一は眉をひそめ、小さく呟いた。
もしかすると、自分の能力は愛理が「霊魂連結」で魂を繋げたときにしか進化しないのかもしれない——そんな考えが頭をよぎる。
だが、もしそうならば、愛理には再び大きな負担がかかってしまうだろう。
そう思った瞬間、彼の手がぴたりと止まり、瞳の奥に強い決意の光が宿った。
そして、深く息を吸い込み、自らに誓う。
「もう二度と、愛理をそんな目に遭わせない……必ず僕がもっと強くなって、彼女を守る。」
あっという間に3日が過ぎ、戦いの序章はすでに鳴り響いていた。
彼らは未知なる戦場に挑むべく、万全の準備を整えていた。