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18 Blazing through Raging Storm

 ようやく真一が我に返り、冷静な目でヴィクトリアを見つめた。

「総司令官は、ガイドは早くても明日到着だって言っていた。……どうしてこんなに早く来たのだ?」

 ヴィクトリアはくすっと笑い、人差し指で軽く唇を叩きながら、考え込むふりをする。

「うーん、だってね……」

 彼女は視線を上げ、氷のように透き通った瞳に意味ありげな光を宿す。

「真ちゃんに会いたくて、たまらなかったのよ」

 そう言い終えるより早く、彼女はすっと指を伸ばし、真一の胸を軽く突いた。そしてくすくすと笑いながら、一歩後ろへ下がる。

 空気は一瞬凍りつき、そよ風さえ息を呑んだかのようだった。皆が顔を見合わせ、数秒間、場は妙な静寂に包まれる。遠くの街の喧騒さえ、この場には届かないように感じられた。

 愛理は唇の端をわずかに上げて微笑む。しかしその微笑みは目には届かず、むしろ捉えどころのない色を帯びている。首を少し傾げ、目を細めながら、柔らかさの中にわずかな鋭さを含んだ声で告げた。

「そうですか? ガイドのお姉さん、真のこと、本当に特別に思っているみたいですね」

 その裏で、愛理はそっと「霊魂連結」を発動し、ヴィクトリアの心の内を探ろうとした。だが、思いもよらぬ事態が起こる。まるで相手の精神世界が目に見えない障壁で完全に遮断されているようで、彼女の能力では何ひとつ情報を読み取ることができなかったのだ。

 こんなことは、これまで一度もなかった。

 知覚をさらに深めようと試みたが、どれほど努力しても、ヴィクトリアの精神世界はまるで虚無のようで、捉えられる情報は一切なかった。愛理はわずかに眉をひそめ、胸の奥に不安が込み上げる。

 ヴィクトリア自身の特殊な能力なのか。それとも、愛理の「霊魂連結」に何か異常が生じているのか――。

 一方、リアは頬をほんのりと赤らめ、突然の話題にどう対処すればいいのか分からず、伏し目がちになっていた。サティーナはと言えば、腕を組み、意味深な笑みを浮かべながら、まるでよく練られた芝居でも観賞するかのように、真一とヴィクトリアのやり取りを興味深げに眺めている。

 ヴィクトリアの返答に動揺した真一は、しばし言葉を失った。しかし、彼女はすでに巧みに話題を切り替え、くすっと微笑みながら少し首を傾げ、いたずらっぽい口調で言う。

「もう、そんなに真面目にならないでよ、真ちゃん」

 ゆっくりと体を伸ばしながら、これから共に行動する仲間たちを品定めするように視線を巡らせる。そして腕を組み、口元に意味ありげな笑みを浮かべる。

「自己紹介は済んだわね。さて、次はあなたたちの番よ?」

 そう言うと、彼女は手を上げて首元のネックレスを軽く弾いた。氷のような青い瞳が午後の陽光を受けて鋭く煌めき、口調にはどこか挑発めいた響きが混じる。

「ガイドとして、まったく知らない人たちを危険な任務に連れて行くなんて、私、御免だから。」

 彼女の遊び心を含んだその言い方がもたらした独特の空気が、場の雰囲気に微妙に残っていた。

 真一は気持ちを整え、そっと息を吸い込み、自己紹介をしようとした。だが、ちょうど口を開こうとしたその瞬間、隣の愛理が優しげな笑みを浮かべ、心地よい声で先に名乗りを上げた。

「それじゃ、私から行くね。」

 一歩前に出た愛理の髪は、金色の陽光に照らされ、淡い光沢を帯びたライトブラウンのツインテール。彼女は胸元に軽く手を当て、澄んだ明るい声で、どこか誇らしげに、そして挑発的に名乗った。

「星川愛理です。真とは幼なじみで――そう、幼・な・じ・み♡」

 最後の四文字をわざと一音ずつ区切るように強調し、口元に小さな笑みを浮かべながら、まるで勝利宣言のように相手を見据えた。「邪魔しないでね」とでも言いたげな視線だった。

「あら、幼なじみなのね……」

 ヴィクトリアはわずかに眉を上げ、その瞳に興味深そうな光を宿す。

「はい。」

 愛理はぱちりと大きな瞳を瞬かせ、変わらず穏やかな笑みを浮かべたまま、しかしその口調には決して無視できないほどの確かな強さが滲んでいた。

「同時に、私はチームの戦術支援も担当しています。遠距離制圧と情報共有が私の役目です。」

 彼女が「遠距離制圧」と口にしたとき、声のトーンがわずかに上がった。笑顔は変わらず柔らかいまま、何気ない一言のように聞こえたが、その言葉の奥には鋭い針のような静かな警告が潜んでいた。

 ヴィクトリアは考え込むように頷き、一瞬、愛理と真一を交互に見比べると、面白がるように口角を上げた。

「ふふっ…可愛い子ね。」

 愛理の笑顔は変わらなかったが、わずかに顎を上げ、その瞳の奥に冷たい光が宿る。

「次は、私ですね。」

 優しい声が、場の張り詰めた空気を和らげるように響いた。

 栗色の長い巻き髪のエルフの少女が一歩前に出る。両手を胸の前で組み、そっと頭を下げ、そよ風のように柔らかな声で自己紹介をした。

「シルバーソング部族のリアと申します。ご覧のとおり、エルフです。属性魔法が得意で、回復魔法も扱えます。どうぞ、よろしくお願いいたします。」

 ヴィクトリアは静かに彼女を見つめ、ふと何かに気づいたように目を細め、微笑んで尋ねた。

「リアちゃん、真ちゃんのこと、どう思う?」

第12話を読み返していて、大統領が登場するシーンに差しかかったとき、ふと声優の立木文彦さんを思い出しました。『銀魂』のマダオ役があまりにも名演すぎて、なんとなく大統領と重なって見えちゃったんですよね(笑)。もし将来アニメ化するチャンスがあるなら、この役はぜひ立木さんにお願いしたいなぁ、なんて思ってます。


それはさておき、執筆の近況ですが、今月は仕事で大きな変化があって、なかなか集中できませんでした。そのせいで本編は第25章でストップ、翻訳も第21章のままです。ただ、そこまで心配しなくても大丈夫。今のストックなら半年は余裕で持ちますし、翻訳の方はちょっと時間をやりくりすれば何とかなると思います。そんなわけで、引き続き楽しみにしていただければ嬉しいです!

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