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12 Make Humanity Rise Again

 アリソンは真一たちを大統領執務室の前まで案内し、足を止めて振り返った。

「こちらが大統領執務室です。」彼女は静かに言い、全員を見回しながら、やや真剣な口調で続けた。

「大統領閣下がお待ちです。どうか言葉遣いや振る舞いには十分お気をつけください。」

 全員が頷くのを確認すると、アリソンは手を伸ばし、扉を軽くノックした。澄んだノックの音が廊下に響き渡る。

「入れ!」と、自信に満ちた力強い声が扉の向こうから響いた。

 アリソンは微笑み、真一たちの方を振り返ると、重厚なオーク材の扉を押し開けた。脇に身を引き、「どうぞ」と手で促し、全員が中に入るのを見届けると、静かに扉の方へ戻ってそっと閉めた。

 部屋の中は広々とした豪華なオフィスで、壁には威厳ある絵画が数点掛けられ、床には厚手のカーペットが敷かれ、中央には精巧な彫刻が施された巨大な机が据えられていた。

 その机の後ろには、がっしりとした金髪の男が座っていた。きちんとしたスーツに身を包み、輝く瞳と自信に満ちた意味深な微笑みを浮かべている。彼の隣には、高級な軍服をまとった男が立っていた。両手を背中で組み、鷹のように鋭い目つきで、全身から軍人特有の冷徹な気配を漂わせている。

「ようこそ、ようこそ!」大統領は両腕を大きく広げ、部屋全体を包み込むように熱烈な歓迎の声をあげた。

「やっと来てくれたね!実に素晴らしい顔ぶれだろう?」

 真一は一行の先頭に立ち、素早く部屋の中を見渡し、最後に大統領に視線を留めた。そして軽く頷き、落ち着いた声で応じた。

「お招きいただき光栄です、大統領閣下。」

「おいおい、そんな堅苦しいのはやめてくれ!」大統領は笑顔で手を振りながら言った。

「君たちはこの世界を救った勇者たちだ。我々の英雄だよ。なあ、マスク(Musk)?」

 隣に立つ軍人“マスク”は依然として無言のまま、大統領の言葉に軽く頷いてそれを認めた。

 愛理はそっと真一の腕に手を添え、目の前の二人を見上げる。その瞳は鋭く光り、心の内で静かに「霊魂連結」を発動し、大統領と軍人の感情の揺らぎを探った。

 大統領の思考は極めて活発で、内心には複雑な思惑が渦巻いていた。一方、マスクの精神はまるで鋼鉄のように揺るぎなく、余計な感情の起伏はほとんど感じ取れない。

「さあ、座ってくれ!」

 大統領は部屋の隅に置かれた高級そうなソファを指差し、明るい声で促した。

「話したいことが山ほどあるのだ。」

 大統領の笑い声が響く中、真一たちはゆっくりとソファの方へ歩を進め、この重要な会談に備えた。

 全員が席に着くと、大統領は順に彼らへ視線を送り、さらに笑みを深める。そして両手を組み、ゆっくりと語り始めた。その背後では、マスクが荘厳な彫像のように静かに立ち、両手を背中で組んでいる。

「君たちの活躍は、すでに世界中に知れ渡っているよ。」

 そう言いながら、大統領は真一をじっと見つめた。

「雷野真一。君の知恵と決断力によって、蓮華城は能力を悪用する組織の陰謀を事前に察知できた。侵攻の際、君は迅速に対策を講じ、敵の重要人物を次々と討ち倒し、当初は敵対していたエルフの女性を味方に迎え入れることにも成功した。」

 大統領はそう言うと、リアに視線を向けた。リアはわずかに肩をすくめ、頬をほんのり赤らめ、困惑した様子を見せた。

「蓮華城がさらに深刻な危機に陥るのを回避できたのは、君の勇気ある決断のおかげです。」

 真一は軽くうなずき、それ以上何も言わなかった。

 大統領は言葉を続けた。

「魔王軍が蓮華城へ大規模侵攻を仕掛けた際、君はチームを率いてためらうことなく強大な魔族たちに立ち向かい、幾度も死線を越え、ついに敵を撃退し、魔王軍を撤退へと追い込んだのです。」

 大統領の口調は落ち着いており、敬意に満ち、この栄誉を称えるように、言葉を丁寧に紡いでいった。

「さらに称賛すべきは、力と知恵による勝利のみならず、誠実な人柄によって敵軍の高官の信頼を勝ち取り、彼女を魔王軍から離反させ、君たちと共に戦わせたことです。」

 そう言うと、大統領の視線はゆっくりとサティーナへと移り、意味ありげな微笑みを浮かべた。サティーナはわずかに顎を上げ、自信に満ちた落ち着いた様子で優雅に微笑んだ。

 真一は少し気恥ずかしそうに頭を掻き、謙虚に言った。

「これは僕一人の功績じゃなく、皆さんの協力の賜物です。皆の支えがなければ、僕たちは決して成功できなかったでしょう。」

第21章の各話タイトルは、ちょっと遊び心で『頭文字D』の楽曲っぽい感じのタイトルにしてみました。この章のスピード感と熱さを、少しでも感じてもらえたら嬉しいです。


ちなみに、この巻の最終章は第21章の続きになっていて、ここで登場した“お姉さん系”能力者の視点で描かれる予定です。これが実は、次の外伝への伏線にもなってたりします。


それと、第4巻が終わったら、いよいよ外伝の公開が始まります。正直に言うと、自分としては本編よりも外伝の方が好きだったりします(笑)。というのも、本編はもともと現実への失望とか、自分自身を認めたくて書き始めた部分が大きいんですが、外伝――特に第2部は、自分が本当に書きたいと思ってる物語のエッセンスを詰め込んだ作品なんです。だからといって第1部が手抜きってわけじゃないですよ!初めての長編ですし、自分なりに考えたアイディアを全部詰め込んで、特にキャラクターの造形や性格の描写にはすごく力を入れました。


ここまで読んでくださってる皆さん、本当にありがとうございます!これからの展開もぜひ楽しみにしていてくださいね!

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