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ep4.消失

ゴーーーーーー…


さっきまで乗っていた電車がホームから離れていき

、一息つく。

すごく怖い体験をした。

自分と全く同じ顔の人間が、走って追いかけてくる。

ドッペルゲンガーと会った人は死ぬってなんかで見たような気がする。

じゃあ、あのギャルっぽいドッペルゲンガーは私を殺しに来たってこと…?

冗談じゃない。なんで私がそんな目に遭わないといけないの。

逃げて正解だった…!

まだ心臓がバクバクしてる。とにかく帰ろう。

駅を降り、家がある方向へ歩き出す。

歩きながら、さっき起こった事を整理してみる。


まず、私は沙奈と駅まで歩いて、別々のホームで別れた。

自宅方面へ向かう電車が走るホームで電車を待っていると線路を挟んだ反対車線のホームに私とそっくりなギャルが居て、私を見つけるなり追いかけてきた。


「……」


やっぱり意味がわからない。あの子は何者なのか、なんで追いかけてきたのか。

本当にただ顔がそっくりなだけの別人で、相手も私の顔を見て驚いて追いかけてきた?

でもじゃあ、月曜日に病院で見かけたあの子は?

あれはただの体調不良が見せた幻で、今回のギャルは本物のそっくりさん?

それとも両方ドッペルゲンガーで私を殺そうとしてる?

じゃあなんで病院の子は私を見て追いかけてこなかったの?

自分で投げかけた疑問が、新たな疑問を呼びこみ、わけがわからなくなる。

でも、ただ一つだけわかることがある。


どうやら私は、なにかとんでもない事に巻き込まれかけているということ。


普通、こんな連続で2度も自分のそっくりさんに出会うなんてありえない。

私の頭がおかしくなったか、それとも本当にドッペルゲンガーというものが存在しているのか。

それとも、本当になにか大変な病気にかかってるとか?

その病気が私にあんな幻を見せているのかもしれない。

つまりは幻覚ってこと?病気は病気でも精神疾患?いえいえ、私は至って健康ですよ。

健全などこにでもいる女子高校生。

「……はぁ」

ため息をつく。そりゃため息の一つや二つくらいつきますとも。こんな意味不明な出来事に見舞われているのだから。


「あーーー!もう!私は一体どうしてしまったのー!!!」


住宅街のど真ん中にも関わらず思わず叫ぶ。

「ワンワンワン!」

大きな声を出したから外で飼われている飼い犬が反応した。

自宅のすぐ近く、ご近所のこのワンチャンは確か須田さんちの柴犬のサクラちゃん。

目がクリクリしていて、耳がピンと立っていてとても愛らしい。

「サクラちゃん、私どうやらおかしくなってしまったみたいだよ」

「ワン!」

ポストの柱にリードを括りつけれているサクラちゃんにしゃがんで話しかける私。

「犬に言ってもしょうがないよね」

「ワン!」

サクラちゃんは普段家の中にいたはずだから、飼い主さんが散歩のために外で待たせているのかも。

忘れ物でもしたのかな。

「サクラちゃん、私どうすればいいと思う?」

「あう~?」

首をかしげるサクラちゃん。かわいい。

「よしよしいい子だね~」

サクラちゃんを撫でて癒されていると、家の中から須田さんの奥さんが出てくる。

「サクラ~お待たせ~!散歩いこっか!あら」

家から出てきた須田さんの奥さんと私が目が合い、軽く会釈する。

「どうも」

「あらら~()()()()()()?イメチェンしたの~?そっちの方がかわいいわよ!似合ってるじゃない!」

「あはは。」

ユウリ?私の名前は汐凪ですけど。近所に住んでいるけどあまり懇意にしていなかったからか、名前を覚えられてないみたい。

だとしても失礼だなあ、このおばさん。

よくわからずテキトーに会釈をし、やり過ごす。

「サクラちゃん、またね」

「ワン!」

立ち去る際にも軽く会釈をし、サクラちゃんに別れを告げ自宅へと向かう。

自宅までもうすぐそこ、ようやく家に帰れる。

もうなにもしたくない。帰ったらベッドに寝っ転がってすべてを放棄しよう。

うん、そうする。決めた。今決めた。少なくとも今日はもうなにも考えないぞ。

交差点を渡り、マンションを通り過ぎまたもう1つ小さな交差点を抜ければ我が家がある。

「着いたー!」

念願の我が家に到着し、門を開け自宅のドアを開き、玄関に入る。


あれ?なにか、違和感を覚えた。


体が思わず静止する。なんだろう、まるで、他所のお家に忍び込もうとしているようなこの妙な感覚。

ねえ私、ここは私の家だよね?間違えてないよね?

いやいや、何をおっしゃいますか汐凪さん。

ここは紛うことなき私が生まれ育ったお家ですよ。

一悶着あったけど、いつもの電車に乗り、いつもの駅を降り、いつもの帰り道を通り、そして見慣れた家に帰ってきた。

散々おかしな目に遭ってるのだからもうこれ以上変なことがあってたまりますか。

でも、一応ね、一応確認しておこうかな。念の為に。


数歩下がりドアを閉め、門を出て我が家の全貌を確認する。

住宅街に並ぶどこにでもある一軒家。見慣れた家。

私が生まれ育った家。どこからどう見ても。

けど、なにか変だ。なんだろうこの違和感は。

数秒ほど我が家を見つめていると、その違和感の正体が炙り出された。


さて、ここで問題です。

一軒家に必ずあって、その家主を示すものってなーんだ。

チクタクチクタクチクタク。


正解は、『表札』でした。


そう、我が家の名前が刻まれている表札。

違和感の正体はそこにあった。私がこの家に生まれて育ち、何度も何度も見てきた我が家の表札。

当然私の苗字である『舞鶴』という文字が刻まれているはずの表札。

そこには、こう刻まれていた。


“ 大湊”






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