第1話
「明日から来なくていい」
突然言われた一言に頭が真っ白になる
「ボス!なんでなんだ!!俺は何もしてないだろ」
「何もしてないからクビなんだ」
「そんな、、今の案件はどうなるんだ俺をクビにしたら数千万がパーになるぞ」
「わかってくれ、エズラ。今回の大量解雇でお前じゃなくても他がクビになるんだ。」
「なんで、俺が、」
「お前の代わりはジェームズが引き継ぐ。しっかり教えてやってくれ」
「クソ野郎!!」
「お、おい!エズラ!」
「放っておけ。落ち着く時間も必要だろ」
溜息をつきながら
「お前にこの会社は狭すぎる」
エズラはゴミ箱を蹴りながら屋上へ行く
タバコを吸いながら空を見上げる
ーーなんで俺がクビなんだよ
今まで遅刻だってしたことがねぇ
ミスを全くしたことがない訳ではないが取引先とは上手くやってたはずだ
クソッタレめ
何度考えても納得がいかないが
クビになった以上出来ることはもう無い
引き継ぎを終え自宅に帰りやけ酒をする
「クソみたいな人生だ。」
数ヶ月後
ドンドンドン!!
「ここに居るのはわかってんだよ!家賃払えないなら出て行ってくれ」
大家の怒鳴り声が響き渡る。
家賃も滞納。転職失敗。
クビになった次の日、彼女と親友の浮気現場に遭遇し破局。全てを無くしたエズラは家に引きこもるようになった。ゴミがそこら中に溜まりハエが集る
ついに水道も出なくなり電気もつかない
近所からは死んでるのでは?と噂になるほど匂いが漂う。出て行くように何度も催促が来ていたが無視を続け、我慢の限界が来た大家が来て今に至る
「限界か」
ドカン!
大きな音と共に大家が無理矢理扉を開けゴミと一体化したエズラを引き上げ外になげすてる
「出ていけ!!ここにお前のものはない」
ボサボサに伸びた髪をかきながら
空を見上げ太陽の眩しさに目を細める
暑さでやられそうになり影のある路地裏に歩き
家と同じような匂いのゴミ箱の横で食べ物を漁る
明日も生きれるか分からない
それでもどうでもいい。このまま目が覚めなかったらいいのにと思う
「エズラさん?」
目が覚めると取引先で仲良くなった新人が覗着込むように俺を見つめていた
「マテオ?」
「お久しぶりです、エズラさん!こんな所で何してるんですか?ってか、めっちゃ臭っ」
テオは取引先ではあったものの初々しく真面目だったこともあり時間を数日間違えたり。大切な資料をシュレッダーに入れたりとありえないミスが続いてもフォローを入れたり寛大にも受け入れたりして仲良くなった。
普通だったらクビになったりするところをエズラの勤めていた所が大会社だった事やエズラの存在のおかげといっても過言では無い
「いつも助けて貰ってばっかりですが、僕もついにこの別の事業を任せてもらいそののリーダーになったんです!明日の会議でも活躍するので見ててくだいさよ!」なんて目をキラキラさせながら話す
「俺、クビになったんだよ」
「え?」
「またまた〜なんの嘘ですか!エズラさん!あなたに限ってそんなこと……」
エズラの頭から全身を見下ろし絶句する
「そ、そんな。ほんとなんですか?」
「あぁ」
しばらく無言になり事の経緯を話す
静かに聞いたあと言い出しにくそうに
「あの、僕で良かったら働き先を紹介してもいいですかる?エズラさんが働いていた所ほどでは無いですし仕事内容も全部変わりますが……」
「気にしなくていいよ。俺は友達や後輩に縋ってまで仕事が欲しいとは思わん。このままくたばったっていいんだ。」
「いやいや、頼ってくださいよ。死活問題ですよ?」
「俺は仕事ばかりして信用してた親友と彼女との浮気にも気付かなかったんだしな。」
「それはその2人が悪いんです。エズラさんのせいではありません!それに僕はエズラさんのおかげでここまで来れたんです。新人1年目で失敗ばかりしていた僕がここまで来れたのはエズラさんのおかげなんです!だから頼ってください」
「それは、お前の努力の結果だ。」
「エズラさん!」
「そこまで言うならこんなボロボロの俺でもいいのか?」
「もちろんです!実は言ってなかったんですが僕は立国ホテルの社長の息子で跡を継ぐために名前を替えて業界も違う会社で働いてたんです。なので父に伝えれば社員として働かせて貰えると思います!いつも助けて貰っていたことは父にも話していたので!」
「は!?」
急な情報の多さに頭がついていけず思わず固まってしまった。
「エズラさん?」
「お前、そういうことは早く言えよ!!」
その後、会社を早退したマテオは自宅にエズラを連れて行き全身綺麗にした後父に紹介。住む場所まで手配とトントン拍子に全て上手く行き
エズラは一人暮らしができるアパートとホテルの従業員として働く事になった。
資格などは持っていないが会社で10年以上取引先等とのやり取りで他国語を学んでいたこともあり困っているお客様への対処やフォローなど
細かい気配りや働きぶりをかわれた。
最近では他国から評判を受け、宿泊に来られる方が増えたが
「可愛い女の子を連れてきてくれ」
「食事が好みじゃないからお金は払わない」
「シャンプーが髪質に合わないから変更して」など
無理難題が多く疲弊していた。
「外国人なんてクソくらえ!!!」
仕事終わりの夜空に叫びながら缶ビールを飲んでいた