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だいきゅうわ

 イッちゃんはかなり深い井戸でした。


 とはいっても、もちろん、いつまでも水があるわけではありません。


 上手い具合に雨は降るのです。


 そのおかげで、キヨさんの商売が途切れるのは雨の日だけ。イッちゃんの喜びが途切れるのも、雨の日だけ。


 しかし、なんといっても、並ぶひとの多いこと、多いこと。


 確実に、着実に、水は減っていきました。


 一時のような大雨が降らないかぎり、商売の寿命が尽きるのも時間の問題……。


 するとある日のこと。


「え?」


 朝一番にくみにやってきたひとが言いました。


「なに、一回あたり米二合だって?」


「ええ、すみませんねえ。ついこの前から、そうしたんですよ」


「そんなの、きいてねえぞ」


「すみません……ですがもう、それでくんでるひとがいますから」


 この言葉はウソです。


 そばにいたイッちゃんは知っています。


「それなのに、あなただけ米一合って、そりゃ不公平になってしまうでしょう?」


 そのひとはぶつくさ文句を垂れました。


 キヨさんはいつもの言葉を繰り返すだけです。


「嫌ならいいんですよ、嫌なら。使わなければいいんです。ほかにも使いたいひとは……」


 最後に言い添えました。


「まあ、わかってくださいよ。水も、限りあるものなんですから」


 これは事実でした。


 イッちゃんも、ちょっと心配になっていたくらいには減ってきていたのです。


 こうして、商売の料金はみるみる上がっていきました。


 最初こそ、ゆるやかな上昇でした。


 しかし、ある頃から、たがが外れてしまったのか、ずんずん料金が高くなっていきました。


 それにつれ、イッちゃんはいっそう豪華になりました。


 そんなある日のこと。


 事件が起りました。

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