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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
竜圏の聖域
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呉越同舟 第二節

「ヒ、ヒメ様いつからこちらに!?」


 トワは急に姿を現したヒメの姿を見て驚きつつそう口にします。

 これに対して甲冑の人はヒメの姿を認めると、すぐにその場にひざまづき彼女に対して最敬礼を行いつつ言葉を発します。


「竜伎様、この度は私めの様な若輩者に直接修行をつけて頂く機会をお与え頂きまことにありがとうございます」


「君は相変わらず堅苦しいね~もう少し肩の力を抜いてリラックスしなよ」


「いえ、このドラッヘの調和と安定の象徴である竜伎様に対して、気安い態度を取るわけにはまいりません」


「私はそんな大した存在じゃあないんだけど・・・まあそれで君の気が済むならそれでいいや」


 やうやうしい態度と言葉で自分を敬う甲冑の人に対してヒメはそう適当に返答すると、彼女は二人の近くにゆっくりと近づき改めて話を始めます。


「さてトワ君にはさっき話したけどこれから君達二人には第二階梯習得の為の修行を受けてもらう。が私が直接指導するって事は死の危険を伴うがそれでも構わんかね?」


「はい、私は一向に構いません。あらゆる困難も危険も覚悟していますが・・・ただ一つ大きな疑問があります」


「へえ、その疑問って?」


「このトワとかいう、どこの馬の骨とも解らない半端な傭兵機士までもが、竜伎様から直接指導を賜るなど納得いきません。竜伎様はどうしてこのような半端者にまで目を掛けられるのですか!?」


 ヒメに問われた甲冑の人はビシッとトワの方を指差してそう言い放ちます。


(くそ~何とか言い返してやりたいけど、あの甲冑野郎の言う事もあながち間違っていないから返す言葉がない)


 甲冑の人の言い分に腹を立てるトワでしたが、その言い分が割りと納得出来た為に何も言い返せませんでした。

 そしてトワが胸中で悔しい思いをしていると、ヒメが甲冑の人の問いに答えます。


「ハハハ、確かに君と比べたらトワ君は元々機士の家系の生まれでもないし、才能も並以下でこれといって優れた点もない」


「ならばなぜ!?」


「トワ君はね魂の在り方が実に奇妙で興味をそそられるんだよ。そんな彼女を指導すればどんな風に成長するか楽しみな所があるし・・・言うなれば私のちょっとした娯楽の為だね」


「そ、そんな事の為に指導を施されるのですか!?」


「そんな事とは随分な言い草だね~それとも何、君もしかして私の娯楽の邪魔をしようっていうつもりかい?」


「い、いえその様な考えは決してありません」


「なら問題ないね」


 甲冑の人の問いにヒメは少しプレッシャーを掛けつつそう答えます。

 そんな二人のやり取りを間近で聞いていたトワは、少々緊張しつつも内心ではある事を思案していました。


(私に修行をつけてくれるのは娯楽の為だったのか・・・てっきりドラゴンのオドを制御する為の技術を伝授してもらえるとばかり思っていたけど、いやあえてあの甲冑野郎にその事を伏せたのかもしれないが、一体何の為にそんな回りくどい真似を?)


 そんな疑問をトワは覚え更に思考を巡らせようとしますが、それを遮る様にヒメは言葉を放ちます。


「さて、それじゃあそろそろ修行を始めるとしますか」


 そう言うと同時にヒメは指をパチンと鳴らします。するとそれまでどこまでも広がる殺風景な荒野だった結界空間がみるみる内に漆黒の闇に覆われてゆきます。


「うわっ!何だコレ!?」


「!?」


 トワと甲冑の人が周囲の変化に戸惑っている間にも、闇は広がり続けやがて二人は完全に真っ暗闇の中に包まれてしまいました。


(この状況は・・・結構シャレになってないかも)


突然暗闇の中に放りこまれたトワは焦りと恐怖を感じます。


「どうだい突然真っ暗闇の何も無い空間に放り出された気分は?」


「正直、急にこんな事になって相当ビビってます」


「私は新月の闇夜でも修練を積んだ事があるので特に問題はありません」


 ヒメの問いに対し、トワは素直に恐怖を感じていると返答します。

 それとは反対に甲冑の人はある程度余裕を持ってそう返答します。


「ほう、流石に幼い頃より機士になる為に厳しい訓練を受けてきただけある。この程度では動揺もしないか」


ヒメが恐らく甲冑の人にそう称賛した事を聞いたトワは、多少気後れしつつもヒメにある問いを投げ掛けます。


「あの・・・何でこんな暗闇の中で修行を?何か意味があるのでしょうか?」


「はあ?そんな事自分の頭で考えなよ。私がいちいち答えてやる義務とかあるのかい?」


 トワの質問にヒメはすげなく答えると、指導の為の言葉を放ちます。

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