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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
竜圏の聖域
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呉越同舟 第一節

「・・・あのここは?」


「先程、竜伎様が仰られていた修行場でございます」


「・・・」


 案内役の女性に連れてこられたトワは目の前の景色、どこまでも広がる大空と荒野を見て思わず絶句します。


「後程、竜伎様が来られるのでトワ殿はここで待っていて下さい」


「ちょ、ちょっと待って下さい!ここって確かヒメ様の邸宅の中ですよね?」


 眼前に広がる光景に半ばパニック状態になったトワは、女性にそう問い掛けます。


「いかにもそうですがそれが何か?」


「いや、幾ら広大な邸宅とはいえこんな常識外れにだだっ広い空間があるのはおかしいと思うのですが!?」


「ああこの修行場の事ですか・・・ここは竜伎様がドラゴンの方々のオドとご自身が編み出した術式を組み合わせて造られた一種の結界空間なのですよ」


「・・・驚いたヒメ様、いや竜伎様はこんな事も出来るのか・・・」


「竜伎様にとってはこの様な大掛かりな結界を造る事さえ、朝飯前の芸当ですからね。それでは私はこの辺りで失礼させて頂きます」


 女性はトワにそうシレっと答えると結界から姿を消しました。

 その場に残されたトワはこの結界に興味が湧いた為に少し内部を散策してみました。すると・・・


「・・・甲冑が立っている」


 見渡す限り何も無い荒野の結界の中に、全体を銀色にコーティング塗装されたファータ鋼製で自分と同じ位の身長の甲冑が一つ、そこに突っ立っていました。


(綺麗な造形だ。ヒメ様の持ち物かな?)


 そう目の前の甲冑に興味を持ったトワは、よく見回し触れようと手を近づけた次の瞬間--


 バチン!


 突如振り上げられた甲冑の腕により、手を弾かれしまいます。


「いっ、痛つつつ!」


(なっ、何甲冑が一人でに動いた!?)


 トワがそう突然の出来事に混乱していると・・・


「いきなり人の体に触れようとするなど、何と無礼な奴だ!」


「かっ、甲冑が喋った-!?」


 それまでピクリとも動かなかった甲冑が突然動き更に言葉を発した事にトワはますます慌てて混乱しかけますが・・・


(あっ!落ち着いて観察すると、あの甲冑は人族独特のオドを纏っている。つまりあの甲冑の中には人が入っているって事か)


 一旦冷静になって真実に思い至ったトワは、未だに少し痛む手をさすりながら甲冑の方に向き直り謝罪します。


「すっ、すみません!中に誰も入っていない空の甲冑だと思い込んでいたので、つい触れてしまおうとしました」


「フン!例え私が身に付けていなくても、他人の物を気安く触ろうとするとは一体どういう神経をしているんだろうな!」


 少しハスキーな声音で怒気を露にしつつ甲冑の人はトワに注意します。

 自身に非があるとはいえ、その高圧的な言い方にほんの少し腹が立ったトワでしたが、そこはグッと我慢して甲冑の人とコミュニケーションを図ろうとします。


「私の名前はトワ・キビマキ。ハイライン王国の辺境の島出身で、今はリャンシャン竜圏傭兵機士団で傭兵をしています。今回の事、心よりお詫びします」


「成程、ハイラインの蛮族ならば礼儀を知らぬのは当然か」


 この物言いにカチンと来たトワは、甲冑の人と揉める事を覚悟の上で発言します。


「こちらがわざわざ丁寧に名乗った上に謝罪までしているのに、キチンとした返答すら出来ないとはね。野蛮なのは果たしてどっちかな~」


「・・・どういう意味だ」


「そのまんまの意味さ。あんたは外見は立派なだけの礼儀を知らない、中身空っぽのハリボテ野郎って事だ!」


「何だと!」


「何よっ!」


 二人の口論がヒートアップしいよいよ喧嘩になりかけたその時-


「ハハハ、二人とも随分元気が良いね~これなら修行でも中々期待出来そうだ」


二人が慌てて声がした方を弾かれるように見ると、そこにはいつの間にかこの結界空間に忽然と姿を現したヒメの姿がありました。

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