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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
竜圏の聖域
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竜伎 第四節

「じ、自分はトワ・キビマキと申します!」


「わ、私は水上藤子と申します!」


「ああ、二人共そんなに緊張する必要はないよ。私としてはもっと砕けた態度で接してくれて構わない」


 ミヅナガラヒメが放つ底知れぬオドの気配に、すっかりガチガチになっている二人に彼女はそう気さくな様子で声を掛けます。

 その言葉で少しだけ緊張が和らいだトワは彼女に謝辞を述べます。


「ミヅナガラヒメ様。今回私の症状を治す為に直接、お骨折りを頂きまして誠に感謝いたします」


「あ~いちいちフルネームで呼ばれるのは面倒だから私の事はヒメと読んでくれ。あとそんな格式張った態度や言葉遣いも無用で構わんよ」


「はあ、そうですか」


 無理して礼儀正しく振る舞ってトワはヒメの言葉を受け若干態度を和らげてそう言います。


「そうそうそれぐらいで良い。その方が私も肩が凝らずに済む」


 そう言ったヒメは少し身体を前に乗り出し、トワの姿をまじまじと見つめ言葉を続けます。


「ロッソのオドによる高熱が出る症状だが・・・あれは実際治っていない」


「そうなんですか!?」


「ああ、ポーションによって一時的に症状を抑えているだけだよ」


「その・・・根本的に治す方法とかは無いんですか?」


「まあ少なくとも私も含めた第三者の治療で治す術はないよ」


「マジかあ・・・」


「あとついでに言うとこのままだと君、ロッソのオドに侵食されて、高熱に冒され最終的には死ぬから」


「・・・」


 ヒメの口から軽いノリで語られた真実にトワは思わず絶句します。

 そんなトワの様子を傍目で見ていたトーコは彼女の事を心配し、すかさずヒメに質問します。


「ヒメ様!その・・・何とかトワが助かる方法は無いんですか?」


「ああ、あるよとてもシンプルな方法がね」


「ほっ、本当ですか!?その方法是非とも教えて下さい!」


 ヒメの言葉を聞いたトワは即座に反応しそう言葉を発します。


 その言葉を聞いたヒメはニヤリと人の悪い笑みを浮かべつつ、トワの瞳をしっかりと見据えて彼女に語り掛けます。


「うん。構わないよ・・・但し相応の対価は頂くけどね」


「どっ、どんな対価を支払えばよいのですか?」


「う~ん、それはこの場では言えないな。言えば価値が薄れるし」


 相変わらず人の悪い笑みを浮かべたヒメはそう言い放ち、トワに選択を強います。


「私が君に示す道筋は二つだ。一つは対価を支払い生き延びるか・・・」


 ヒメは少しもったいぶって言葉を続けます。


「このまま赤竜、ロッソのオドに身体の内側を犯され喰い殺されるか、そのどちらかだね」


「対価を支払います。なので生き延びる方法を教えて下さい!」


「おや?即答だね。もう少し躊躇すると思ったけど」


 ヒメはトワの素早い反応に若干驚き意外そうな声を上げます。


「まあ、色々と思う所もありますが、私もまだやり残した事ややりたい事も沢山あるので」


「ふ~ん、それは故郷に残した母親や不治の病に冒されている幼馴染みの事等々かな?」


「っつ!何故それを!?」 


「そんなのは君の纏っているオドと魂を視れば解る事だよ」


「魂を視るって・・・そんな事が出来るんですか?」


「ああ、私にとってはとても簡単な事さ。特に君の場合は機士としての才能ははっきり言って並み程度かそれ以下なのに妙な魂の在り方をしているしね」


「才能云々の部分は自分でも痛感していますが・・・魂の在り方が妙とは?」


「いったままの意味さ。それが証拠に君は生まれ故郷で白竜、ビアンコの怒り買い制裁を喰らっても、何事も無いようにピンピンしている。それだけで大分妙ではある」


「そうなんですか?私はてっきり故郷での一件はただただ運が良かっただけだと思ってたんですが・・・」


「はは、その運を手繰り寄せたのは、君のその妙な魂の在り方故さ。まあここまで来ると異常と言っても差し支えないね」


 そう言うとヒメは改めてまるで珍しい生き物を見る様にトワをまじまじと見つめると続けて言葉を重ねます。


「まあその魂の在り方故に今度はギニー火山をねぐらにしている彼女、赤竜ロッソに興味を持たれたようだがね」


「おかげで大変な目に遭いましたよ・・・しかも私には到底扱い切れないオドまで頼んでもいないのに分け与えられ、そのせいで今死にかけてますし」


 トワはそう言ってギニー火山での出来事を思い出し嘆息しつつ、言葉を続けます。

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