表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
竜圏の聖域
91/147

竜伎 第三節

「お目覚めになられましたか?」


 トーコが話ているといつの間にか部屋に入って来た、テューロス地方独特の民族衣裳を身に纏った女性がトワにそう話しかけて来ました。


「貴女は?」


「ヒメ様・・・竜伎様よりトワ殿のお世話をするよう言い付かった者にございます」


「ああ、この人がさっき言った竜伎様の処方したポーションを持って来てトワに飲ませてくれた人だよ」


 トーコは民族衣裳の女性の方を向き、トワにそう説明します。


「それはどうもありがとうございます。お陰で助かりました」


「いえ、私は竜伎様の言い付け通りにしたに過ぎません」


 女性は畏まった態度でそう言うと続けて・・・


「お目覚めになられ早速で申し訳ありませんが、竜伎様がトワ殿とお供の方にお会いしたいと申しておられるので準備して頂けないでしょうか?」


「竜伎様が私達に?一体なんの用だろう?」


「さあ、そこまでは私も存じておりません。ただトワ殿、貴女の意識が回復しだい自分の所に連れて来いとしか・・・」


「解りました。トーコもそれでいい?」


「うん、私は全然構わないよ」


 トーコがそう返答するとトワは帰せられていた寝間着から、女性が用意した民族衣裳の正装に着替え、身嗜みを整えると竜伎と会う為に部屋をあとにします。


「はあ~こりゃ凄い!海も街も一望出来る」


 女性の案内でシン・ロンの中心部にある高い丘の上に建てられた竜伎の住居兼ムンコーンの総本山である広々とした邸宅の廊下を歩きながら、そこから見えるシン・ロンの街並みとその向こうに広がる大海原を目にしたトワはそう感嘆の声を上げます。


「私も初めて見た時はトワと同じ反応をしたよ。本当に美しい所だよね」


 邸宅のある丘から海岸線まで石灰岩で造られた大小様々な白色の家々や、石造りの重厚な建物に平地にある巨大な建造物を見やりながらトーコはそう述べます。

 こうして二人がシン・ロンの風景を楽しんでいると案内を務める件の女性が邸宅の中にある大きな扉の前で立ち止まり二人に告げます。


「この扉の向こうにある広間に竜伎様がおられます。御二方共、決して竜伎様に粗相のないように気を付けて下さい」


「は、はい」


「りょ、了解しました」


 トワとトーコは緊張した面持ちでそう答えます。その様子を確認した女性は扉を開き二人を広間の中に招き入れます。


(こっ、これは・・・凄い!)


 広間に入った二人は広間の壁や天井等に描かれた壁画、恐らくはドラッヘの歴史やドラゴン達にまつわる伝承を描いた壁画を眺め心中で吐息を洩らします。


「ここの壁画がそんなに珍しいかい?まあ外部には公開していないから無理はないけど」


 と、そんな初めて聞く声に驚いた二人は弾かれた様に声が聞こえた方、広間の奥を見やります。

 するとそこには非常に整った顔立ちに、腰まで伸びた水色の髪に菖蒲色の瞳をした美しい妙齢の女性が、着流しを纏い脇息に肘を掛けゆったりとした様子で座っていました。


「!?」


「これ・・・はっ!」


 妙齢の女性の姿を見た二人は、彼女がその身に纏う海の様に広く深く、そして何より重々しいオドに思わずたじろき、その場から一歩し退いてしまいます。

 そんな二人の様子を眺め、悪戯っぽい笑みを浮かべた女性はゆっくりした口調で告げます。


「初めまして二人共、私は竜伎ミヅナガラヒメ。この街シン・ロン主だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ