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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
赤竜の誘い
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赤竜の試練 第四節

 トワが悪態をついている間にもフレイム・イールは再びマグマの海から飛び出しトワを噛み千切ろうとします。


「こなくそ!」


 またもすんでの所で噛みつきを避けたトワは即座に帯剣しているコルタナを抜剣し、隙の出来たフレイム・イールの胴体を思い切り斬りつけますが・・・ニュルンとした何とも言えない柔らかな感触しか残らず、全くダメージを与えている手応えは残りませんでした。


(しまった!確かコイツは体皮に特殊な分泌液をまとっ・・・)


 そうトワが思い出しているとフレイム・イールは体をひねり強烈な尾の一撃をトワに向かって放ちます。

 ズドン!という重い音と大きな衝撃と共にトワの体は見事にぶっ飛び灼熱のマグマの海に放り込まれてしまいます。


「トワっ!」


 その様子を間近で見ていたトーコは顔色を失い、そう叫んでトワがやられてしまったと思い絶望しかけますが・・・


「ちょっと、いやかなり痛かっただけだからそんなに心配しなくても大丈夫だよトーコ」


 咄嗟にコルタナで尾の一撃を防ぎつつ、身に纏うオドを強化しマグマの海の上に立ったトワはトーコにそう答えます。


「・・・良かった」


 そんなトワの姿を見てトーコは安堵の声を洩らします。

 しかしトーコが安堵している間にもフレイム・イールはマグマの海を自在に泳ぎトワを喰らい噛み千切ろうと狙っています。


(さてどうしたものか・・・確か座学で習ったあの魔物の特性は体皮に特殊な分泌液を纏っているから物理・魔法攻撃が一切効かないというものだったけか)


 トワは恩師であるヒューとの座学で習った事を思い出しながらフレイム・イールを討伐する為の方法を全力で考えます。


(外からの攻撃を一切遮断するとなると・・・残るは内側からダメージを与えるしか方法はないんだけど具体的にはどうするか・・・)


 そんな風にトワが考えに耽っていると、その機を逃さないとばかりにマグマの海から踊り出したフレイム・イールが巨大な口を開き襲い掛かります!


「ええい!ままよ!」


 トワは叫び両手でしっかりと握ったコルタナを横薙ぎに払い、フレイム・イールの口内に斬撃を加えようとしますが・・・ガキン!という硬質な音と共に斬撃はフレイム・イールの頑丈かつ鋭い牙に阻まれてしまいます。


(ちっ!やはり半端な方法は通じないか・・・せっかくようやくまた会えたトーコと共に生きて帰る為には命を賭ける程のリスキーな戦法で挑むしかない!)


 赤竜の思惑とはいえ半年ぶりに再会したトーコと共に生きて帰りたいトワは、そう意を決して今度は逆にフレイム・イール方に突っ込んで行きます。

 そんなトワの行動を待っていたとばかりにフレイム・イールはその巨大な口を開けてトワを丸呑みにしたその刹那。


--!?


フレイム・イールは自身の口内に鋭い痛みを感じ悶絶します。


「ははっ!口の中にコルタナが垂直に突き刺さっているんだ。痛くて当然だよねぇ!」


 フレイム・イールの口内をコルタナで貫きトワはそう叫び、今度は右脚で口内を強く踏みつけ、その際に生じる反発力を利用しフレイム・イールの上顎部を右拳で数発殴りつけます。すると・・・


ガコン!ビリッ!バリリィ!


という不快な音が鳴りフレイム・イールの上下の顎が外れて外皮が裂けます。


(やっと大きな隙を見せた!このまま一気に畳みかける!)


 心中で意気込んだトワは刺し込んでいたコルタナを引き抜くと、そのままフレイム・イールの無残にも裂けた口に斬撃を加えその長大な体躯を上下二つに両断しました。


「ふう~何とか仕留めたか」


 マグマの海に沈んでゆくフレイム・イールの亡骸を見やりつつトワが安堵した次の瞬間--


 バシャア!という音と共に両断された筈のフレイム・イールの上部、性格に言うならば頭部及び上顎部がトワに襲いかかります。


「しまっ・・・がああああっ!!」


 不意を突かれたトワはオドを纏っていたにもかかわらず、死に損ないのフレイム・イールに右肩部を噛まれ牙を突き立てられて激痛に襲われますが・・・


「クソッタレが!いい加減くたばりやがれっ!」


 噛みつかれ襲い掛かる猛烈な痛みに耐えながら、フレイム・イールの脳天に幾度もコルタナを突き立てると、今度こそフレイム・イールは頭部を中心に醜く変形崩壊しマグマの海に沈んでゆきました。

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