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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
赤竜の誘い
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初陣 第八節

 トワはカリームにそう返答し、レイラン国土防衛機士隊の残り一機の機士に止めを任せ自身は敵機に攻撃を仕掛けます。しかし・・・


(くっ!やっぱアルコン搭載型は反応も鈍いし、動きも硬いや!)


 そう毒づきつつも機体の手に保持された戦斧型のコルタナを振るい敵機に強襲を仕掛けます。


 果たして自分達が倒した筈の機体が急に戦列に復帰し、攻撃を仕掛けてくるなど露ほども考えていなかった敵機はトワの駆るセリカの一撃をモロに喰らってバキン!という音と共に大きく姿勢を崩します。


 そこにレイラン防衛機士隊の機体が同じく手に保持した戦斧型のコルタナを振り抜き止めをさした事により、戦力は三対二と数的には逆転し有利となります。


(アルコン制御の色々な鈍さに苛立っても仕方無い・・・これからはアルコンに合わせた操縦を行った方が無難かな)


 敵を一機、味方と協力し沈めたトワは人心地ついてそう考えました。しかし今度はカリームが押さえていた筈の二機の敵機から、手負いで落とし易いと判断されたのか執拗に狙われる破目に陥ります。


(ゲッ!私を標的にする!?まあ損傷し弱っている相手を先に潰してしまおうと考えるのは妥当な判断だろうけど・・・)


 そう思いつつ追って来る敵機体達と、半年前に戦ったあるキャバルリーとその搭乗者との圧倒的な力量差を比べ気勢を上げます。


「あの時と比べりゃ相当マシな状況だっ!」


 トワはそう叫ぶと、あえて損傷した円形の盾で敵機を殴りつけます。ミシリと盾と盾を装着している機体の左腕の関節パーツとフレームが嫌な音を立て、制御しているアルコンも警告を発しますが構わず続けて、もう一機の方も盾で殴ります。


 損傷した腕部と盾で攻撃して来るなどと全く想定していなかった敵二機は、トワの無茶苦茶な行動に虚を突かれダメージを負い更にカリーム達から追撃され大ダメージを負います。


「よっしゃ!このまま止めをささせてもらう!」


 トワがそう興奮し、機体の手に掴んだ戦斧型のコルタナを敵機達に振り上げたその瞬間・・・


 ギュイイイン!


「!?」


 ベキッ、グシャ!


「ぐがっ!」


 いつの間にか戦線に姿を現した左肩装甲部を青色に塗装したクラナック・ネザレの放った衝撃斬により、コルタナを握っている右腕部とその余波により生じた衝撃により操縦シートまで損傷を負ったトワは思わず苦痛の声を上げつつも、本能と経験からよろけかけた機体を即座に立て直し、コルタナを構えます。


(ヤバイ!ヤバイ!完全に姿も気配も見落としていた。あんな凄腕がまだ後詰めに残ってるとは思わなかった!)


 先程の攻撃により操縦シートの右の操縦捍及び、それを握っていた右手にダメージを受け激痛が走る中でも、トワは突如現れた新しい敵の実力を冷静に分析し、次の攻撃に備えていましたが・・・


「カリーム隊長!ついでにトワ!無事か!?」


 そうロブから通信が入ったのと同時にリャンシャン竜圏機士団の三機が、今まで相手していた敵を撤退に追い込むのと同時にこちらに向かって来るのを戦術データ・リンク上でトワは確認しました。


 そしてそのタイミングを見計らったかのように肩を青く塗った例の敵機は眼部センサーをチカチカと明滅させると、トワ達にやられかけていた敵二機に何らかの合図を送ると、二機は戦場から撤退を始め、殿として残っていた例の機体も仲間が引き上げるのを確認した後に戦場から離脱してゆきました・・・


「見事な引き際だ・・・あんなのがまだアリーク側の後詰めに残っていたとはな」


「乱破として奴の存在を見落としていた私のミスです・・・すみませんでした。あっ痛っっっ」


「私達ですら見落としていたのだから、貴様が謝罪することはない。それより先程の攻撃で負った怪我の具合はどうか?」


「右手の骨が折れたっぽいですが、まあ何とかへっちゃらです」


「そんな訳ないだろう。帰還したらすぐに治療を受けるように。我々機士は体が資本だいつでも万全のコンディションでいられる事もプロの義務だ」


「はっ、はい肝に命じておきます」


 ロブの指摘にやや緊張しつつもトワはそう答えます。こうしてアクシデントは起こりつつも何とか彼女の初めての本格的な戦闘体験、初陣は敵勢力の撤退という形で幕を閉じるのでした。

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