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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
赤竜の誘い
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初陣 第三節

「ハァイ!そこのお嬢さん。こんな何も無い所で何をしているの?もしかしてヒッチハイク?」


「いえ別にそういう事はしてません。ただ向こうの方にある街を目指して歩いてるだけです」


「街って・・・アル・アクーサの事?まだここから35キロもあるんだよそこまで歩いていく気?」


「まあ見ての通り歩く以外に手段は無いですし、そうなりますね」


「ふうん。もし良ければ送っていってあげるけどどうする?」


「あ~折角の申し出ありがたいんですが、初対面の人にそこまで良くしてもらうのは少し抵抗があるので・・・申し訳ないですが遠慮させてもらいます」


「ふ~ん。何だか私達気が合うような気がしていただけに少し残念。ねぇ貴女もそう思わないトワ・キビマキさん?」


 そう自身の名前を初対面の人間から聞き、言い知れぬ恐怖を感じたトワは本能的に女性から距離を置き直ぐ様戦闘態勢に入ります。


(何だこの人?なんで私の名前を知っている!?)


 頭の中に疑問が巡る中でもトワは女性を凝視してしっかり観察します。


(あまりに自然に声をかけられたのと上手く薄めているから気が付かなかったけど、この人結構な量のオドを纏っているしヒューさん並みに洗練されている!)


 目の前にいる女性がオドを纏う人間。つまり機士か魔導師のどちらかであると見抜いたトワは最大限警戒心しつつ女性と対峙していましたが・・・


「ゴメンゴメン。急に見知らぬ他人から名前を呼ばれれば誰だって警戒するわよね」


 女性はトワに謝罪し更に言葉を続けます。


「私の名前はジーナ・パテイン。ここテューロス地方を拠点にしている傭兵機士団に所属している機士でね。実はウチの団長の命令で、恐らくこの辺りに飛ばされたであろう貴女の事をここ数日探していたのよ」


 ジーナと名乗った女性はそう言いつつ、手にしたタブレット型魔導器を操作し更に話を進めます。


「今、ウチの団長と替わるから詳しい話は彼から聞いて」


 ジーナはそう言うとタブレットをトワに手渡します。

するとそこには浅黒い肌と短く刈り込んだ髪にゴーグルを着けた厳めしい顔つきの男性が映っていました。


「貴方は確か一騎討ちの際にヒューさんと一緒に観覧席で試合を見ていた人・・・ですよね?」


「覚えていてくれていたとは話が早くて助かる。私の名前はロブ・ウェッティンガム。ここテューロス地方を拠点に活動しているリャンシャン傭兵機士団の団長で、君の師であるヒュー・バンベリーの古い知り合いでもある」


「はあ、そうなんですか・・・所でなんでそんな人が私なんかの事を探して回っていたんですか?いやそれ以前になんで私がルガーブル大陸にまで飛ばされた事を知っていたんですか?」


「それは君があの一騎討ちの直後、意識不明になった時にドラゴンのオドを暴発させ大きな騒ぎを起こしたからだ。記憶に無さそうだから教えるが、その際にミナカミ・トーコさんを含めた十数人の地球人達も同時に姿を消し現在も行方不明になっている」


「トーコが行方不明!?」


 ロブが語った行方知れずとなった地球人の名前にトーコが含まれていた事にトワは大きく動揺しそう叫びます。そして・・・


「もしかして私が何かあの場で余計な事をしたせいでトーコが・・・」


「それは驕りというものだトワ・キビマキ」


 トーコが自身のせいで行方知れずになってしまったのではないかと勘違いしそうになるトワをロブは厳しい口調で窘めます。


「あの暴発はドラゴンが君の体を通して引き起こした一種の事故であり天災だ。そしてドラゴンの考えや思惑はたかが人間族や他の種族ですら推し量る事など出来ない」


(確かにドラゴンの・・・あの大いなる存在の意志を人間ごときが知るのは不可能なんだろうな)


 故郷の遺跡での体験で嫌という程、ドラゴンがどれだけ大きく恐ろしい存在か認識しているトワはそう考えます。そして・・・


「つまりドラゴンがやる事はあまりにも人間の思惑から大きく外れるから気にするなって事ですか?」


「端的に言えばそうなるな・・・そしてそれこそが君を探していた理由でもある」


「どういう事です?」


「どういった経緯かは解らないが、君はドラゴンのオドをその身に宿している可能性がある。それが証拠に君はこのドラゴンの聖域であるテューロス地方に転移させられた訳だしそれに・・・」


 ロブは一旦言葉を切るとトワに重大な提案を切り出します。


「ドラゴンのオドをその身に宿している・・・かも知れない人材はかなり貴重だ。なので君をウチに、リャンシャン竜圏傭兵機士団にスカウトしたい」

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