初陣 第一節
竜歴1521年--
「熱っちい・・・やっぱルガーブル大陸はプーリタイ島とは全然違うな」
照りつける太陽の下、一面の荒野を眺めながら偽装用のポンチョに身を包み額に汗するトワがそう故郷やかつて所属していた島国の国家との気候の違いに愚痴っていると--
ビー!ビー!
装着しているのヘッドギア型の魔導器からけたたましい警告音が響きます。
「これは・・・国境線に敷設していた使い捨てのセンサー型魔導器が反応したって事よね。つまり・・・」
(アリークの軍隊が国境を越えて来たって事だ!私が当番の時に限ってコレとは何てついてない!)
内心でそう悪態をつきつつも、トワは手早く後方のレイラン国軍の指揮所に緊急連絡を入れます。
「ロブ団長!トワです!国境線のセンサー群に感あり、アリーク軍の越境です!」
「了解。こちらでも確認したが、越境してきた部隊の詳細が解らん」
「すぐに確認します」
トワは今現在所属しているのリャンシャン竜圏傭兵機士団の団長であるロブにそう報告すると、直ぐ様それまで隠れていた岩陰から移動し、見晴らしの良い高い岩場にオドを高めて素早く登るとヘッドギア型魔導器の望遠モードを最大にして目視による観測を行います。
(土煙を上げながら進んで来るグループが三つ、一グループに約三機のキャバルリーという編成か・・・)
目視での確認を終えたトワは即座にロブに連絡します。
「敵は三機編成のキャバルリー部隊が三つ。等間隔に並走しつつ国境より真っ直ぐ南下して来てます」
「・・・中隊規模の編成か、なら敵は恐らくアリーク純血機士団のはねっ返りといった所かな」
「それでどうします?」
「貴様はそこで引き続き乱破として情報収集及び報告に務めよ。我々はこれからレイラン国土防衛機士隊と共に準備が完了しだい出撃する」
「了解しました」
「・・・貴様がウチに来て半年、初めての本格的な実戦になるが気負う必要は無い。ウチやヒューの所で教え込まれた事をしっかり活かせ。そうすればすくなくとも死は遠ざけられる」
「わ、解りました」
そうトワはロブに返答すると、再びこちらに迫りつつある敵部隊の姿を岩陰に隠れて監視しながらも一人、物思いに耽ります。
(あれから半年も経つのか・・・)
そう心中で呟き、半年前に起こった事をゆっくりと思い出します--
この章から物語の舞台がプーリタイ島から、ドラッヘの中心である『ルガーブル大陸』に移り、トワも新たな仲間を得てお話のスケールも大きくなっていきます。