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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
追放立志編
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始まりの終わり 十四節

 ヒューがトーコにそう説明しつつも闘技場での戦いは更に進んでいました。


 まずトワがのけ反り弾かれた膝を折ったヒロキに対して強烈な前蹴りを顔面、正確には鼻柱に喰らわせ盛大に鼻血を噴出させます。


「クッ!」


 苦悶の表情を浮かべつつ、素早く立ち上がり反撃に転じたヒロキは手にしたコルタナをトワの脇腹に突き立てます。


「ガハッ!」


 あまりの痛みで顔を歪め、口から血を吐き出しつつもトワは未だ諦めずにいました。


(このまま奴のコルタナを抜けないようにして、攻撃に転じる!)


 そうトワは即断し、件の呼吸法を使い自身のオドを爆発的に高めると、脇腹に力を入れます。


「くそっ!抜けない!」


 ヒロキがそう少し慌てている事を確認すると、トワはすかさず自身の右足でヒロキの右足を踏みつけると、近くの地面に転がっていた自身のコルタナを拾い上げ、自身とヒロキの右足を刺し貫き固定するという荒業に打って出ます。


「がっ!」


「ぐっ!」


 ヒロキもトワも右足に走る痛みにより苦痛の声を上げます。


 しかしトワはそんな痛みも何とか我慢し、今度は左手をお椀形にして、勢いよくヒロキの耳に打ちつけ鼓膜を破ろうと腕を振るいますが・・・


 ガシッ!


 すんでの所でヒロキに腕を止められ打撃は失敗に終わります。しかし・・・


(これで準備は整った。後は打ち込むのみ!)


 ヒロキの両手が塞がっている事を確認したトワは、コルタナを握っていた右手を素早く離し、今までより更に限界を超える勢いでオドを高め練り上げると握りしめた右拳でヒロキの胸部。正確にはその奥にある人間にとって最も重要な臓器である心臓に打撃を打ち込みます。


 ドン!ドン!ドガッ!! 


 最初の一撃はヒロキの莫大なオドにより阻まれます。


 しかし二撃目はそのオドを貫き更に、ヒロキが着込んでいた装甲服の胸当てに大きな亀裂を入れます。


 そして最後の三撃目はとうとう胸当てを粉々に破壊し、心臓にダメージを与える事に成功します。


「ガハッ!」


 ヒロキはそう苦悶の声を上げ、心室細動を起こしかけます。


 そしてこの機を逃さずトワは更に追撃を仕掛け、ヒロキに止めを刺そうとしますが・・・急に目眩に襲われ、纏っていたオドも急速に萎み霧散してしまいます。


「くっ!ここまで来てオド切れとはっ!」


 そうトワは悔しがり自身の状態を嘆きますが、これまでの無茶な行動の繰り返しに、身体中に負った傷から溢れ出る流血に限界を超えた高出力のオドを練り上げ続けた事の当然の代償でした。


 そんなトワの様子を見たヒロキは、今までの好青年然とした雰囲気ではなく、どこか不気味さを感じさせる口調でトワに語り掛けます。


「ありがとう。君のおかけで人に殺されるかもしれないというスリルと、人を殺せるという快楽を実感出来た」


 そう言うとトワの脇腹に刺し込んでいたコルタナを引き抜きそして・・・


 ズバッ!ザン!ドッ!


 一度目の斬撃で右足をはね、二度目で頸動脈を切り、三度目で心臓を刺し貫きました。


「もう聞こえているかどうかも解らないけど、僕は生まれつき殺し合いという行為に恋焦がれていたという事が、君との戦いで実感出来た・・・心より感謝するよ」


 どこか歪に見える笑みを浮かべヒロキは、殆ど死にかけのトワにそう捨て台詞を吐き闘技場を後にするのでした。

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