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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
追放立志編
51/147

始まりの終わり 十三節

「うっ!」


 そんなトワの痛々しい姿を観覧席から見ていたトーコはあまりの光景に思わず目を伏せてしまいます。


「目を逸らしてはいけませんよミナカミさん」


「こんな一方的にトワが痛めつけられている姿をこれ以上見ていられません!」


「それでもです。貴女がトワさんの友人だというのであれば尚更目を背けてはなりません」


 ヒューは身体中に傷を負い血を流しながらも戦い続けるトワから目を逸らそうとするトーコを静かなしかし厳しい口調で諭します。


「だけど相手の神宮寺君はトワに比べて実力は遥かに格上、このままじゃケガだけじゃあ済まないかもしれないんですよ?」


「・・・そうですね。しかし例えこのまま最悪の状況に至る事になっても私はトワさんを止めません」


「どうしてですか!?」


「機士という業人には誰しも心の中に絶対に譲れないナニかを持っている物なのです・・・そしてそのナニかは時として、自分の命より重たい時があるのですよ」


「そんな・・・あまりに馬鹿げてる!」


「他人から見たらそう映るでしょうね。しかし安心して下さいミナカミさん、まだトワさんは命もこの戦いも捨てる気はないようですから」


 全身に傷を負い血を流しながらも、目の光だけは失われていないトワの姿をしっかりと見据えつつヒューはトーコにそう宣言します。


 事実トワは闇雲に突進しているように見せかけつつ、策の仕掛け所を探っていました。


(この辺りの距離がギリギリ射程内か、なら早速仕掛ける!)


 そう心中で呟いたトワは右手に握ったコルタナを地面に突き立て闘技場の床、石畳を砕くと素早く砕かれた石の破片やその下にある砂利を掴み、オドを高めて腕を超高速で振り抜きそれらをヒロキに向かって投げつけます。


 突然、広範囲にかつ高速で飛来する砂利と礫に、流石のヒロキも余裕ぶって対処している暇が無くなりそれらを全て纏い練り上げたオドで叩き落としますが・・・


 ブォン!!


 そんな轟音と共に今度はコルタナが一直線に飛んできました。


 この続けざまのアクシデントに流石のヒロキも多少動揺し、帯剣していたコルタナを抜刀し右薙に斬り払って飛来したコルタナを打ち落としましたが・・・その直後、トワの姿を見失っている事に気付き自身の迂闊さを呪います。


(今が好機!)


 そう察したトワはヒロキの腰に肩から体当たりを仕掛け、その次に左腕で彼の腿を抱え引き倒しつつ、右腕を上げてそのままヒロキに掌底を喰らわせます。


 あまりに突然の出来事に技に対応出来ず掌底をもろに喰らったヒロキは口と鼻から血を流しつつ、その場からのけ反り弾き飛ばされます。


 その様子を見ていた観覧席の観客達は思いもよらぬトワの反撃に動揺し、ざわつきますがヒューとロブだけは冷静にトワの様子を観察していました。


「おい今の技、私が昔貴様に教えた・・・」


「そう貴方に教わった大陸でよくつかわれているステゴロの技です」


「おいおい、あんな品の無い技を大事な徒弟に教えて大丈夫か?」


「ステゴロって何ですか?」


「簡単に言うと喧嘩で使われる技術の事で、機士同士の戦いでは用いられない。邪道な戦法の事です」


「なぜそんな戦法をトワに教えたんですか?」


「・・・機士である以上時には自分より格上の相手と戦わなければならない状況はままあります。そういった場合は正攻法よりも、ああいった邪道な戦法が有効であり生き残る確率が上がる為です。」

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