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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
追放立志編
5/147

トワ・キビマキ 四節

「いっ痛たたたっ・・・」


 全身を襲う痺れと痛みでトワはなじみ深い村はずれの丘の上で意識を取り戻しました。


(あれ?私ついさっきまで遺跡の中にいた筈なのに、どうしてココにいるんだろう?それにあの超でっかいアレは・・・)


 トワが未だハッキリとしない意識でついさっきまで自身の身に起きた事に考えを巡らせようとした時・・・聞き慣れた声が聞こえました。


「ようやく目が覚めたか」


「・・・伯父さん何でこんな所に?」


「・・・あの遺跡を住み処としておられるお方が、安眠を妨げた馬鹿者をこの辺りに捨てると村長と助役である私に伝えられた為に慌ててカッ飛んできた」


 眉間にシワを寄せ、硬い声音でトワの伯父であるトーマスはそう語りそして・・・


「お前は村の掟を破り、最大の禁忌を犯した・・・よって村の法にのっとりトワ・キビマキを永久追放する事が決まった。何か異論・反論はあるか?」


「特には無いですがやけに決定が早くないですか?」


 遺跡に無断侵入すると決めた時からトワもこうなる事はある程度予測していたし覚悟もしていたが、追放処分決定に至るまでのスピードがあまりに迅速な事に疑問を覚えます。


「村長の配慮だ。今はまだ夜中で村中真っ暗だが、夜が明けて事が露見すれば、村人達はお前を吊し上げる事は目に見えているし・・・何よりお前はクリスの唯一の親友でもあるからな」


「そうですか・・・あっ!母さんは!母さんはどうなるんですか!?」


 自分の事、クリスの事で頭が一杯だったトワは母親が今後どのような目に遭うかを全く考えていなかった事を今更悔やんで半ば恐慌状態になりマイクに詰め寄ります。


「・・・ようやく自分が何をしでかしたか、その重大さを解ったみたいだな」


 マイクは冷ややかな声でそう述べて言葉を続けます。


「カヤの、お前の母親の事も村長が自身の邸宅で面倒を見て下さるそうだ・・・あそこなら村の連中も下手な手出し出来ないだろう」


「そうですか・・・それなら本当によかった」


 未だ完全に不安な気持ちを拭えなかったものの、母親の身の安全がとりあえず確保された事に対して涙まじりに安堵の声を洩らします。

その声を聞いていたマイクはトワにある物を寄越しました。


「コレは?」


「長旅用の鞄と装備一式だ。あと・・・」


 マイクはそう話し懐から皮袋を取り出しトワに渡します。


「カヤと私がお前が小さい時から何かあった時の為に積み立てていたお金だ。路銀として持っていきなさい」


「ちょっ!?こんな沢山のお金を私みたいな掟を破った罪人が貰うわけには・・・」


 トワそう言って大量の硬貨が詰まった皮袋をマイクに返そうしますが・・・


「さっきも言った通りそれはお前の為の金だ。何も気に病む事は無い」


 そうぶっきらぼう語るとトワに背を向け、村の方に向き直り続けます。


「クリスの病が進行し、お前が日に日に思い詰めている事をなんとなく察していた・・・だからこんな日が来る事もある程度予想はしていた」


「・・・」


「だというのにお前の無茶を止められなかった・・・無知で無力な伯父ですまない」


「・・・ごめんなさい」


 肩を小さく震わせ謝るマイクの背中を見て、トワは改めて自身のしでかした軽率な行動を恥じ本当に申し訳ない気持ちで一杯になり心から謝罪します。


「・・・さっきは永久追放と言ったが・・・二、三年でほとぼりが冷めるだろうからその頃に戻って来なさい。村の皆は私が必ず説得しておくから」


 マイクは最後にそう話して村の方へと歩き出しました。そんな伯父の背中を見つめていたトワはその場で深々とお辞儀を行います。


(伯父さん。今まで凄くお世話になりました。この恩は必ず返します!)


 トワは心中でそう固く誓った後、手渡された鞄を含む装備一式と皮袋をしっかりと装着すると、村の南にあるステネス島唯一の港町に向かいそこから島の南方に位置する『プーリタイ島』に渡る為に生まれ故郷から旅立つのでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 賛否が分かれる作風でしたが楽しめました。 このスタイルを貫いてください!
2023/01/12 05:16 退会済み
管理
[良い点] 世界観にセンスがあると感じました ドラゴンという存在の脅威が 描写で伝わってきました [一言] 短編をちびちび描いてるので よかったら読みに来てください お待ちしています
[良い点] 伯父さんと村長が優しすぎて、心温まる思いです。ただ、掟は掟、ということ、遺跡のドラゴンへの敬意もよく伝わってきました。旅立ちの場面として良かったように思います。 [一言] トワちゃんが一人…
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