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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
追放立志編
43/147

始まりの終わり 五節

 そう国王が高らかに宣言すると観覧ステージが感動と興奮で湧き上がり、観客席にいた全員がスタンディングオーベションを行います。


 ヒューとロブも他の皆にならい立ち上がり国王に拍手を送っていましたが・・・他人には聞かれぬように特殊な魔導器を用いた通信魔法を使用し会話をしていました。


「骨太のフレームに大型の関節、膨大なオド出力・・・おい、あの機体もしかして・・・」


「・・・外見はかなりイジって解りにくくしていますが、間違いなくベルモンド帝国の主力キャバルリー・ヘロディウムでしょうね」


 ロブの質問にヒューはかなり厳しい顔つきになりそう答えます。


「プーリタイ島より南に位置する巨大なルガーブル大陸。その大陸の東部、実に三分の一を領土とする巨大かつ強大な軍事国家の主力機がなんでこんな辺境の中小国家にあるのかねぇ」


「その辺りの事情は貴方の方が詳しいのでは?」


 ロブの多少芝居がかった物言いに少し苛立ちつつもヒューはそう問います。


「そりゃプーリタイ島に親ベルモンドの勢力を作るのが目的だろう。何せ南部のゲインブルは・・・」


「ベルモンド帝国と政治的・軍事的に対立し、度々衝突を繰り返しているルガーブル大陸西側諸国の代表ともいえるフリアンソン共和国と国交を結び友好と同盟関係を築いていますからね」


 ロブの言葉を引き継ぐ形でヒューはそう話ます。


「要するにプーリタイ島に存在する二ヶ国を使った大国同士の代理戦争って訳だ・・・まあドラッヘではよくある話だから驚きもしないが」


「部外者は気楽で良いですね。当事者である我々にしてみればたまったものではないですよ」


 そうロブに毒づきながらヒューはボックス席にいる国王とその脇に控える宮廷魔導師筆頭のマキロフを見やります。


(マキロフ・・・あの得体の知れない流浪の魔導師を側に置くようになってから国王陛下はプーリタイ島統一の野心を燃やし、軍事力の増強を始めた・・・あの男一体何者で何が目的なのだ?)


 そうヒューが考えているとロブが再び話し掛けて来た為に視線をボックス席から外します。


「あのフロリゼルとかいう機体、元は多分ヘロディウムの輸出型がベースだろ?なのにあのオドの出力・・・本国仕様と比べてもまるで遜色ないぞ」


「確かに輸出型はあちこちデチューンされ性能も品質も劣っていますが・・・恐らく先程陛下が仰った通り地球から招かれた魔導師でフロリゼルの制御を担当しているフジサワ・トモヤ君が、あちこち手を入れて本国仕様とほぼ同じ性能に引き上げたのでしょう。彼は魔工師としての才も有していたので」


「それは凄いな・・・だがいいのか?いくら改装しているとはいえ、ヘロディウムというキャバルリーは高性能な分とんでもないランニングコストが掛かる。それをハイライン王国程度の中小国家が賄えるのか?」


「主力機にするといっても恐らく輸入・改装されるのは十数機前後になると予想されるので、何とかなると思いたいですね」


 ヒューはあくまで希望的観測でそう述べました。


「しかし今回の一騎討ち。シュクルに搭乗している機士と魔導師はとんでもない貧乏クジを引いたな」


「やはり・・・そう思いますか」


「そりゃそうさ。シュクルのベースとなったパーソロンは約200年前に設計されたクサントス・フレームの量産機。使い勝手の良さと高い汎用性にアフターパーツが充実している事から、今なお一線で各国の機士団や傭兵にも使われている。ある種の傑作機だが・・・」


「あくまで大量生産を前提にしているので、飛び抜けて高い性能や個性を持たない。言うなれば特徴が無いのが特徴の機体」


「比べてヘロディウムは大陸屈指の大国が潤沢な資金に、高い技術、豊富な開発経験の粋を集めて造り上げたバリウス・フレームの高性能機。同じ量産を目的に開発されたと言ってもパーソロン系列機などとは比べものにならないハイスペックを誇る」


「その弊害として、対費用効果は最悪ですがそれに見合った性能と戦果を叩き出す・・・流石はドラッヘ三強キャバルリーの一角に数えられているだけはありますね」


 そうヒューは少し表情を曇らせて答えます。そしてその事に目敏く気付いたロブはすかざす彼に問い掛けます。


「浮かない顔だが・・・何かあったか?」


「・・・・・・実はあのシュクルを操っているの機士は私の徒弟なんですよ」


「あ~それは御愁傷様」


 ヒューが言い出す事を躊躇ってやっと吐き出した言葉に対し、部外者であるロブはただそう返すしかありませんでした。


 そんなロブの返答を半分上の空で聞きつつ、当事者で部外者でもあるヒューは、今はただ拳を固く握りしめトワとトーコの安全を願いつつ魔導器によって投影された映像をじっと見守るのでした・・・


作中に登場するロボット兵器であるキャバルリーに使用されている、クサントス・フレームはドラッヘで一番初めに開発されたフレーム(機体の骨格)でオドの出力は平均的ながらパワーと安定性・堅牢性に優れ多種多様な装甲を装備出来る汎用性の高さが特徴。


バリウス・フレームはクサントス・フレームをベースに大型化とそれに伴うオドの大出力化を目的に開発されており強大なパワーと高い性能を誇るものの、コストパフォーマンスが悪く余程国力が高い国が潤沢な資金を持つ組織しか運用出来ない超一級品。


という設定になっております。

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