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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
追放立志編
42/147

始まりの終わり 四節

 同刻--


 その荒地より数キロ離れた場所に急遽設けられた、特別観覧ステージにヒューの姿がありました。


「ほう、急拵えにしては中々壮観ですねコレは」


 国王や王室関係の方々の為だけに造られた豪華なボックス席--


 ハイライン王国の主要貴族や外国の外交官、更に召喚された地球人達要人の為の貴賓席--


 そしてネヴォラス機士団団員の機士や魔導師達の為と、市井の有力者達の為に設けられた多くの席--


 ヒューはそれら観客席を多く擁した仮設とはいえ中々立派な造形をした観覧ステージを眺めそう感想を洩らしました。


「確かにおまえさんの言う通り、あの質素倹約を旨とする王様にしては派手な催しではあるな」


「・・・誰か来ると思っていましたが貴方でしたかミスター、ロブ・ウェッティンガム」


「あれだけ大規模なオドの乱れが突然発生したんだ。どこの国や勢力にしろ探りを入れるだろ?」


 ヒューにロブと言われた市井の有力者に化けた、高身長に浅黒い肌と筋肉隆々の逞しい肉体に、厳つい顔つきと短く刈り込んだ頭髪にゴーグルをつけた男は悪びれもせずそう言い放ちます。


「貴方程の傭兵を雇ってまで、我が国の内情を知りたがる国・・・依頼主はゲインブルですか?」


「守秘義務があるからクライアントの事は喋れんさ」


「その物言いだと依頼主が誰なのか吐いてるようなものですがね」


「おお、そいつはしまった私とした事がうっかりしていたな」


 ヒューの指摘に芝居がかったリアクションで答えます。そして・・・


「まあそう警戒しなさんな。私は今回この国にで何かをするつもりは無い・・・むしろこの国の方が我々に色々と見せてくれるのだろう?」


「・・・まあそうなりますね。今回のこの一騎討ちは一種のデモンストレーション。国内外にハイライン王国の国力と王室の力を示す示威行動なのですから」


 そうヒューはどこか力無い様子でロブに今回の催しの真実をあっさり白状しました。


 そんな風に二人が会話しているとボックス席に国王であるトスティ・ベイリァル陛下が姿を現します。


 その事に気付いたヒューとロブ、それに各階級の観客席でお喋りに花を咲かせていた全員が立ち上がり国王に対して立礼します。


 その様子をボックス席から見回した国王は片手を上げ、皆に礼を解くように指示すると、少ししわがれていますがよく通る声で演説を始めます。


「皆、我が国の歴史が大きく、そして強き方向に変わる今日の佳き日に集ってくれた事を、この国を束ねる者として深く感謝する」


 国王がそう述べるとステージ中から大きな拍手が起きます。


 暫く拍手が続きましたが、これを片手を上げ制した国王は更に言葉を続けます。


「皆、まことしやかに伝わる噂で既に聞き及んでいる思うが、我が国に対して執拗に攻撃・侵略行為を繰り返すゲインブルの脅威を憂い、またそれを打ち倒す為に私はある大規模な魔法儀式を執り行った」


 そう述べると大仰な身振りで貴賓席の方に向き直り言葉を続けます。


「その魔法儀式。異星召喚の儀によって、邪悪なゲインブルの野心を打ち砕き、我が国・・・いやこのプーリタイ島全土にあまねく希望の光をもたらすであろう勇者達を招く事に成功した!」


 そう国王が紹介すると貴賓席に座っていた地球人の高校生、少年少女達が一斉に立ち上がりステージに集った全ての人々に向かい一礼します。


 地球人達のその礼儀正しい姿勢に感心したのか、観客席のいたる所から彼等を讃える拍手が起きました。


 その拍手の波が収まるタイミングを見計らい国王は再び演説を始めます。


「一騎当千の彼等の力を持ってすれば、ゲインブルを打ち倒すのは容易い。しかし現在の我が国の主力キャバルリーであるシュクルでは悲しいかな彼等の力を十全に引き出すのは難しい・・・そこで!」


 肝心な部分で言葉を切った国王が次にどんな言葉を放つのか、ヒューを始めステージ中にいる皆が固唾をのんで見守ります。


「我が国の優秀な魔工師と先程皆に紹介した地球から招いた非常に優れた魔導師殿の手により、シュクルに代わる強力な新鋭機の開発に着手しそれに成功した・・・それがこのキャバルリーである!!」


 国王がそう高らかに宣言すると、映像投影魔法を仕込んだ魔導器が発動し、この観覧ステージから数キロ離れた一騎討ちの現場が映し出されます。


 そこには既に現場に到着していたトワとトーコが搭乗するシュクルがいましたが・・・その対面に突如、オドを使った亜音速歩行により現場に着いた新たなキャバルリーが姿を現します。


 純白の機体色に所々装飾が散りばめられ、丸みを帯びた美しい装甲--


 頭部に設けられた放熱効果と近接武器としての能力を兼ね備え、力強さを感じさせる巨大な鶏冠状のパーツ--


 両腕部に装着された丸型の盾に、右手に握られた黄金色の剣型のコルタナ--


 シュクルと比べ一回り大きいながらも全く鈍重さを感じさせない、どころか美しく力強い印象を見る者に与えるフォルム--


 機体腰部に取り付けられた、ホバー推進機及び空力制動機も兼ねた優美さを感じさせる一対の翼状のパーツ--


 ・・・そして見える者にしか解らない、機体全体から放たれる莫大かつ高濃度のオド--


「この白亜の城塞を思わせる優美さと力強さを兼ね備えるキャバルリーこそ地球の勇者達の為に用意し、いずれ我が国の主力機となる機体・・・フロリゼルであるっ!!」 


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