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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
追放立志編
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トワ・キビマキ 三節

「罠も無ければ、魔物どころか生き物がいる気配も無い・・・やっぱりただのホラ話だったんだ」


 遺跡の中に入って十数分。家から持ち出した予備のカンテラで内部を照らしながら進んでいたトワはそう言って呆れます。

入った直後は何が起きても対応できるよう身構えていただけに今の所は肩透かしを食らっています。


「いやまだ通路は奥に続いてる・・・ホラだと決めつけるのにはまだ早い」


 そう自身を納得させ通路の先をカンテラの灯りで照らしながら、奥へ奥へと歩みを進めていると・・・遺跡の壁や石畳が何の前触れも無く突然強烈な光を放ち始めました。


(ちょっ!何が起こってるの!?)


 狂暴ともいえる光量に突如晒されたトワは半ばパニック状態になり、その場に立ち尽くしてしまいます。そして・・・ようやく光が収まるとソコには途轍もない風景が広がっていました。


 どこまでも果てしなく広がる青い空に、足下にはその空をまるで鏡で写したような光景が浮かんでおりトワはそのただ中に放り込まれています。


「どうなってるの?ここはあの暗くて狭い遺跡の中の筈だよね?」


 自分と周囲の世界に何が起こったか解らず未だ混乱状態にあるトワでしたが・・・両手で自分の頬をパン!パン!と叩き己を奮い立たせます。


「とにかくここで呆けていても仕方ない。ちゃんと周りを調べなきゃ」


 そう意気込んで早速自身の足下がどうなっているのか、恐ろしい程美しい青空が広がっている地面を手で触れてみますすると・・・


「冷たっ!これは土や石じゃなくて水?みたいなモノなのかな?」


 自身の足下に広がっているのはただの地面ではなく、薄い水面である事を発見します更には・・・


「嘘でしょ・・・私の手の荒れがみるみる治っていく」


 水面に浸していたトワの手の傷、日々の労働や家事で出来たあかぎれやひび割れ、タコやマメですらたちどころに治ってゆき肌荒れが一切ないスベスベの綺麗な手になっていたのです。


「そうか・・・コレが、村の伝承にあった万能ポーション!コレさえあればクリスの病もきっと!!」


 探し求めていたモノの発見と、親友の難病が完治するかもしれない事に興奮するトワ。しかしそれ故に自身の前に現れた存在に気付けませんでした。


『・・・』


 長い白銀の髪に翡翠色の瞳をしたこの世の者とは思えぬ程の美しい姿。

見る者によっては恐怖さえ覚える美貌を持つ女性がトワの目の前にやはり突然に姿を現していたのです。


「うわっ!?ビックリした~」


 ようやく女性の存在に気付いたトワは素っ頓狂な声を上げた後その女性に尋ねます。


「あの~いったいどこのどちら様ですか?」


『・・・何人たりとも我が眠り妨げる事許さず』


「何これ?私の頭の中に直接声が響いてる?」


『疾く去ね』


「!?」


 女性が一方的にトワの頭の中にそう宣告すると同時に、トワの身体中に強烈な電撃が走ります。


「ヤバい・・・ぐわんぐわんして・・・意識が・・・保てな・・・!?」


 身体中がバラバラになりそうな強烈な電撃に襲われながらも、何とか意識を保っていたトワは女性の背後にある恐ろしく巨大なナニカの影に初めて気付いてしまいます。

途方もない巨体とそれを支える強大な四肢、背中には体の大きさと同じかそれ以上ある翼、長い首に特徴的な頭部を持ったナニカに。


「アレは・・・まるで・・・ドラ・・・」


 最後に小さく呟いたトワの意識はそこで完全に途切れ、深い深い暗闇に落ちていきました・・・

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公とヒロインが思い合うところにキュンときます
[一言] 読みやすかったです
[良い点] 万能ポーション! これでクリスを救える! と思ったら謎の美女に制裁を受ける。 これは少しヤバいかも。 トワが目を覚ましたらどうなってるんだろうか。
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