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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
追放立志編
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動き出す歯車 十四節

 トワは機体の一対の眼、各種センサー類とリンクしている高解像度網膜投影機能を備えるプロテクター兼ヘッドセットをしっかり装着固定し、機体の胸部にある機士専用の操縦室に入り備え付けの衝撃吸収機能を備えたシートに座りしばし待機します。


 トーコの方はキャバルリーとの情報の遣り取りを行い、機体の制御を行う為のヘッドセット型の特殊なキュケースを装着し、機体の脛椎と胸椎の付け根にある魔導師専用の制御室に入り、機士専用の操縦室にある物と同様のシートに座ると、シートの両脇に備えられたコンソール・ボックスを目に止まらぬ速さで操作すると、機体の起動に必要なシステムを次々と立ち上げていきます。


「よし、大分終わったようだね・・・ならこっちも火入れを開始するけどいいかな?」


「うん。もう火を入れても大丈夫だよ」


 ヘッドセットに送られてくる制御室の立ち上げ状況をモニターしながらトワはそう質問するとトーコはそう答えます。


「りょ~かい、なら早速火入れを始める・・・コオォォォ」 


 トワそう言うなり件の呼吸を行い自身のオドを増大させ、キャバルリーの本格的な起動の為の作業である火入れを行います。すると--


 ブオオオオオオッ!


 トワの増大したオドとリンクする様に機体の中を静かに巡っていたオドが一斉に活性化し、機体の隅々までオドを循環させ始め、フレームから力強い音が鳴り響きます。


「さて火は景気よく入ってくれたみたいだね。なら次は・・・」


そう言ってトワは深く静かに自身の呼吸とオドを整えます。すると--


 フイィィィィ


 トワの調子と重なる様に機体の、特にフレームを流れるオドの様子は落ち着いていき、機体全体がオドを纏った状態になりました。


「火入れ終わったけど、機体の方は問題無い?」


「ええ、オドの巡りを含めて機体全体に問題は無し。いつでも出撃出来るよ」


 トワの問いかけにトーコは相変わらず素早い指捌きでコンソールを操作し、ヘッドセットを通して機体に設置されている各種センサーから頭の中に直接送られてくる情報をとんでもない速度で処理しつつそう答えます。


「よし、それじゃあ早速機体を動かしてみますか」


 トワはそう言うとプロテクター兼ヘッドセットの網膜投影装置の機能をオンにし、機体の眼球部やセンサー類を通して外界の様子を確認すると、文字通りキャバルリーの眼球部を動かし機付き整備員に目配せし整備台の固定を外させます。


 ガコン!


 鈍い音が響いた後、整備台から外れた機体をトワはフッドペダルを踏み少しだけ歩かせ機体脚部の調子を見たり、両手でしっかり掴んでいる左右の操縦桿を操作し機体腕部、主に手首部の動きを見て次の行動に移ります。


「さてさて次はコルタナと盾の装着だな」


 そう言うなりトワはゆったりとした動きで機体を動かし、格納庫内にあるキャバルリー装備運搬用ユニットからファータ鋼材製の盾を取り出し、左腕に装着すると次に右手で剣型のコルタナを掴み武装を完了します。


「武装の装着完了」


「了解、こっちも武装装着による機体のバランス調整は終了。いつでも出撃可能だよ」


 トワが機体に武装を装備した事をトーコに報告すると、トーコがそう答え二人の搭乗したキャバルリー。


 ハイライン王国正規機士団、ネヴォラス機士団の主力機であり、団員の制服と同じ機体色である薄緑色の装甲を纏ったシュクルは、一騎討ちに向けて万全の態勢を整え終えました。


「どうやら出撃準備はトラブル無く終えたようですね」


 いつの間にかキャバルリー装備運搬用ユニットの脇に移動していたヒューが二人の搭乗するシュクルを見上げてそう話し更に--


「・・・今回、二人には辛く不名誉な役割を押し付ける事になってしまい本当に申し訳なく思っています。だから私にはこんな事を言う資格などないと解っていますが・・・」


「どうか二人とも怪我を負わずに元気な姿でこの場所に戻ってきて下さい!!」


 ヒューは腹の底から絞り出すような大声を上げて二人の無事を叫びました。


「「はい!!」」


 ヒューの真心を受け取ったトワとトーコはそうしっかりと答えると、整備員の誘導に従い開け放たれたカミオンのハッチに機体を移動させ、そのまま出撃してゆきました・・・


 こうして様々な人々の思惑が絡む運命の一騎討ちの幕が上がろとしていました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 文章も読みやすく、一話一話の分量がちょうどいいのでテンポよくどんどん読めました。 トワがキャバルリーに乗るまでの過程が丁寧に描かれていてよかったです。 キャバルリーの設定もしっかりしていて…
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