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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
追放立志編
34/147

動き出す歯車 十節

「ちょっと、いやかなり訳が解らない。私みたいな未熟で半人前の機士見習いが相手をしても、召喚した地球人の凄さを示すには役者不足もいい所じゃあ・・・それならネヴォラス機士団の精鋭正規機士が相手をした方がより効果的じゃないですか!?」


「全くトワさんの言う通りです・・・」


ヒューはそう言うと顔を手で覆いながら重い口調でトワの疑問に答えます。


「簡潔に言うと、中堅・ベテランの機士団員達は皆、地球人達の力を恐れ一騎討ちを拒否したのですよ」


「はい?」


「・・・最初は彼等も生意気な余所者を叩きのめすと、意気揚々でしたが、若手の団員達が地球人達に、しかも僅か二~三人相手に為す術なくコテンパンにされた事にすっかり腰が引けてしまったのです」


「はぁ」


「自分達と地球人達の実力は歴然で負ける確率の方が、遥かに大きい」


「フム」


「無様に負ければ貴族社会で笑い者になり、家門・家格に大きな傷がつくそこで・・・」


「負けても誰の損にもならない上に、市民階級の分際で機士を目指している身の程知らずのバカもついでに排除出来る・・・だから私が選ばれたって事ですね」


「全くもって恥ずべき事ですが・・・真相はそうなります」


 自身と、自身の所属する組織がいかに腐敗し、トワを侮辱している事に情けなさと怒りを滲ませつつもヒューはトワを、大事な徒弟を助けるべくある事を告げます。


「やはり彼等地球人の相手はネヴォラス機士団の団員である私が務めます。それが正しい筋というものです」


「申し出は有難いですけど、故郷と家族を人質に取られている以上私がでますよ。でなければ色々と落とし所が無くなるでしょ?」


 トワはそう半ば開き直った様子でそう言い、ヒューの申し出を断ります。しかし--


「トワさんの家族や故郷であるステネス島の事を人質に取り脅した機士は私の部下です。ならば彼を説得すれば貴女がわざわざスケープゴートになる必要はなくなります」


「恐らく説得には応じないと思いますよ。何せ事はもう機士団内部の問題じゃなく王族や貴族社会まで巻き込んだゴタゴタですし・・・誰かが損な役回りを演じなきゃ収まりつかないっしょ」


「・・・しかしだからと言ってまだ子供の、機士としてまだまだ伸びしろのある貴女がこんな下らない事の為に犠牲になる必要などある筈がないっ!」


「私みたいな半端者にそこまで入れ込んでくれるのは有難いかぎりです。だからこそヒューさんは今回の一件には首を突っ込まず静観を決めて機士団や貴族社会との対立を避けて欲しいんですよ。そして--」


 トワは静かに、しかしながら確固たる意志の強さを感じさせる口調で言葉を続けます。


「今よりもちょっとだけ偉くなって多くの優秀で人柄の良い機士を育てて、私のような理不尽な目に遭う奴を減らして下さい」


「っつ!!」


 トワの強い覚悟と気づかいに対しヒューは己の不甲斐なさに怒りを覚え、血が滲むほど両の拳を強く握りしめながら、彼女の想いを汲み自分を納得させトワに告げます。


「・・・貴女の強い決意しかと受け取りました。思う存分戦って来て下さい」


「これで思い残す事は無くなりました。ありがとうございます」


トワはヒューに対して深々と頭を下げ一騎討ちに臨もうと気張りますが・・・そこである重要な問題に気が付いてしまいます。


「あっ、キャバルリーは複座式だった。パートナーである魔導師がいない私の場合どうすれば・・・」


「ああそういった場合、魔導師に代わってキャバルリーの制御を行う・・・」


「待って下さい!その役目、私にやらせて下さい!」


 ヒューがトワに魔導師に代わってキャバルリーの機体制御全般を行う存在があると示唆しようとしたその時--


 格納庫の出入口に現れたハイライン王国宮廷魔導師団と同じ、薄緑の生地に金細工の刺繍が施されたローブを纏い右腕に装着された腕輪型のキュケースを掲げながら美しいハニーブロンドの髪と透き通る様な碧眼した一人の少女が二人の会話に割って入りました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一話一話が短くて読みやすい点と第三者視点でストーリーが展開していくので、世界観が頭にスルッと気持ちよく入ってきます。 [一言] 無理せずやっていきましょ!応援してます!
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