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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
追放立志編
32/147

動き出す歯車 八節

「あんな見え見えの罠に引っ掛かるとは・・・貴女は阿呆ですか?」


「うぐっ!返す言葉もございません・・・」


 王都郊外の荒野に特設された演習場。その近くに駐機しているキャバルリー運搬用大型カミオンの格納庫で久方ぶりに顔を合わせたヒューに開口一番そう注意されます。


「とはいえ、今の状況は私の想定の甘さと根回し不足が招いた結果だ。トワさんを一方的に非難するのは筋違いですね」


「ヒューさんは悪くないですよ。あのハイムとかいう魔導師の口車と挑発に乗った私が阿呆だった訳ですし・・・」


「いえ貴女にこの国の司法や行政システム・・・わけても王候貴族や機士・魔導師等の特権階級独自の力学についてきちんと教えていなかった私の責任は重い。偽の情報を掴まされたというならなおの事です」


「偽の情報?」


「必要に迫られれば、市民階級の人間にオドを教える事、及びそれを扱う技術を教える事は法により認められているのです。何故だか解りますか?」


「・・・あっ!私みたいな庶民、市民階級出身の人でも生まれつき高いオドを身に宿していたり、あるいはかなり稀なケースだけど後天的に身に付いたりするからか」


「その通りです。そういうケースの場合オドを宿した人を速やかに保護してオドの扱い方を習得してもらいます。これはハイライン王国だけの話ではなくドラッヘの多くの国家が批准している法です」


「オドを宿しているだけでそれを満足に制御出来ない人が感情のままに暴れ回ったら・・・ちょっといやかなり不味い事になっちゃいますもんね」


「そういう事です。ですのでトワさんに何の非もありません」


「ならなんであんな嘘を吹き込んだのかな?」


「誠に遺憾ながら、建国以来長い年月培われてきた王候貴族達の特権意識はそういった国際法を軽んじる風潮にあるのです」


「つまり自分達より下の階級の人間が、自分達高貴な血統しか宿し扱えない筈のオドを使う事に不快感を覚えていると」


「かいつまんで言うならばその通りです。だからこそ貴女を自分達に代わってスケープゴートに仕立て上げる計略を立てて、それを実行したのでしょう」


「スケープゴート?計略?」


ヒューの話を聞き、自分がハイライン王国の特権階級の人々に利用されようと知り、更に会話の中で語られた不穏な単語にトワは疑問と不安を募らせます。


「二週間前に王城上空に現れた巨大な術式及びオドの大規模な乱れは覚えていますね?」


「ええ、確か地球の日本?という異星の国家から人を召喚する魔法儀式の影響だったんですよね?」


「っつ!なぜ貴女が今の所まだ国家機密であるその儀式の事を知っているのですか?」


「え~とそれはですね・・・」


 ヒューに国家機密である筈の『異星召喚の儀』の事を知っているのかを問い質された為にトワは一週間前の出来事を白状します。


 マーケットでの買い出しの帰りに変わった風体の女の子を見つけた事--


 その女の子がゴロツキ共に絡まれ、身に宿したオドを暴発させてしまう所だった事--


 オドを暴発させる寸前にその女の子を保護し彼女から、自分達は違う星から喚ばれたという話を聞かされ事--


 そして喚ばれた理由が戦争に勝利する為の道具として利用される事と知り、不安と恐怖を覚えている事--


 それら自分が見聞きした話をヒューに報告しました。


「フム、既に出会って話を聞いているなら余計な説明は不要ですね」


「というと?」


「今回のこのわざわざ新しく特設した演習場を使ってまで行われる大々的な一騎討ちの背景には、彼ら地球人の存在が大きく関わっています。あとこの国の特権階級もね」


 そう述べて一度深く溜め息をついたヒューは、この二週間ばかり自身の周囲で起きた出来事と今現在に至る経緯を語り始めます。

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