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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
追放立志編
31/147

動き出す歯車 七節

(話が美味すぎる明らかに罠を仕込んでるな)


 トワはハイムの出した条件があまりに自分にとって都合が良い為に、この話には裏があると考え警戒しつつ返答します。


「折角ですがその話はお断りさせて頂きます。私がここにいる事で恩人であるバンベリー卿に迷惑をかけるくらいなら、喜んで機士になる夢を諦めますし国を出ていきましょう」


「なっ!?」


 美味い条件さえ出せばホイホイとこちらの提案に乗っかってくると勝手に想定していたハイムはあっさりと前提が破られた為に一瞬狼狽しますが--


「成程、実に殊勝な心掛けですな・・・ただそうなると未だ機士団基地内の監房にて貴女の名誉と機士資格を得る正当性を訴えているバンベリー卿の身柄は一体どうなってしまうのでしょうねぇ?」


(こいつ・・・始めからっ!)


 ハイムのねっとりとした笑みと物言いにトワは顔つきを厳しくします。


 そんな様子をハイムの横で眺めていた例の機士が嗜虐的な笑みを浮かべ更に畳み掛けます。


「貴様確かステネス島の出身だったな?あの島は飛び地とはいえ我が家の領地である。ここまで言えば頭の悪い貴様のような庶民でも察しはつくであろう?」


 ニタニタと嫌らしい口調で弱った獲物をいたぶるようにトワにそう告げました。


(ダメだこいつら。根っ子の部分から腐ってやがる・・・全く全部投げ出したくなってきた)


 トワはこの国の特権階級がいかに腐敗しているのかをまざまざと見せつけられ、何もかもが嫌になり全てうっちゃらかして王国から飛び出そうと一瞬考えましたが・・・


(ヒューさんと故郷を、というか家族やクリスを人質に取られている以上私に選択肢なんて始めから存在しない・・・か)


 そう諦め一騎討ちを受ける旨をハイム達に伝えます--


「おおっ!我等が提案を受けますか!流石はあのバンベリー卿の徒弟。実に勇気ある決断です!!」


「下らない猿芝居も社交辞令ももう結構。それよりさっさと一騎討ちの内容と日時を教えて頂けませんかね?」


「フン!内容はキャバルリー同士の一対一の戦闘と、機士同士のこちらも一対一の勝負です」


 自身の貴族然とした雅やかな立ち振舞いを下らない猿芝居と評された事に苛立ったハイムは憮然とした様子でそう答え更に続けます。


「日時は一週間後の午前から、場所は現在建造中の特設演習場で行います」


「その特設演習場っていうのは機士団の演習場とはまた違った場所なのですか?」


「それを貴女が知る必要はありません!」


 トワのある意味ふてぶてしい言動に、いよいよ我慢が利かなくなったハイムは被っていた猫を放り捨てヒステリックに叫びます。


「とにかく貴女は我々の指定した日時と場所に大人しく来ればよいのです!解りましたか!?」


「はあ、とりあえず了解しました。が私はその特設演習場の場所が解らないので、行きようがないんですが?」


「一騎討ちの当日に使者をこの屋敷に寄越すので、その者についていきなさい!我々からの話は以上です!」


 そう金切り声を上げた後、ハイムは席を立ち護衛の機士を伴って現れた時と同じく唐突に屋敷を去っていったのでした。


そして一週間後--

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― 新着の感想 ―
[良い点] ハイムさんの猫の皮が薄くて軽くてびっくりですが、とても面白かったです。まぁ、猿芝居ですよね、ホントに。鼻を明かしてくれるのを心から期待しています。
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