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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
追放立志編
30/147

動き出す歯車 六節

「見習い機士の資格剥奪に国外追放!?」


「ええ、それが貴女に下された処分です」


 ヒューの屋敷の応接室にて王城から命を受けて来たと宣うハイム・ブライスという魔導師からトワはそんな身に覚えのない処分を突き付けられます。


 そもそも何故こんな訳の解らない事になっているのか?


 それは少々時間を遡る事三十分程前、トーコと別れたトワが買い出しで購入した荷物を抱えて屋敷に戻ると・・・そこに待ち構えていたハイムとその護衛と思われるネヴォラス機士団の機士にほぼ無理矢理屋敷の中にあっという間に押し込まれ・・・現在の状況に至ります。


「突然そんな事を言われても納得出来ません。せめてきちんとした理由を・・・」


「黙れ!下賎な庶民風情が我等に口答えするなど万死に値する!」


 トワが理不尽かつ一方的な処分を不可解に思いハイムに説明を求めようとした所、護衛の機士が激高し腰に帯剣したコルタナを抜き斬りかかろうとしました。が-


「お止めなさい。ここは貴方の上司でもあるバンベリー卿の屋敷。そこで刃傷沙汰を起こせば卿の名誉に傷がつきます。それは貴方としても本意ではないでしょう?」


「うぐっ!それは確かにブライス卿の仰る通りですな・・・」


 ハイムが翳した杖状のキュケースにより行動を牽制された機 士はコルタナから手を離し一歩下がりますが、トワに対してより一層怒りの視線を向けるのでした。


 そんな機士の様子に呆れつつもハイムはトワの質問に返答します。


「理由は幾つかありますが、一つはこの国では王候貴族出身でなければ機士及び魔導師になる為の教育は受けれないという事です」


「それは少しおかしい。正規の機士であり貴族でもあるヒューさ・・・バンベリー卿がその事を知らない訳がない。ならなぜ私のような庶民を徒弟にしたのか・・・」


「バンベリー卿は良縁に中々恵まれず、四十を越えても未だ独身。家門の事や自身の先々を考えて貴女を養子にしようと考えたのでしょう・・・」


「しかしその行為が王国の法に触れたと」


「法には触れていませんが・・・もし養子を取るにしても家格の釣り合った他の家門の子弟を迎えるのが建国以来の通例で、市民階級の人間を貴族の養子に迎えるなど前例がないのです」


(つまり純血の貴族及び血統を守る為の暗黙の了解という事ね・・・馬鹿馬鹿しくて怒る気にもなれないや」


 トワがそう心中で呆れているとハイムは更に畳み掛けるように話を続けます。


「とはいえ一番の理由・・・いや一番重い罪は市民階級の人間にオドの事やそれを扱う技術を教えた事でしょうな。それは明確に王国の法を犯しています」


「それで国外に追放ですか・・・しかし妙な話ではあります。あの規律や規範に厳しいバンベリー卿がその事実を知らなかったとは考えられないんですが」


「貴女を養子に迎えた後に事後承諾で、オドを取り扱う技術の習得を認めさせるつもりだったんでしょうな。まあ今となっては全て無駄に終わりましたが」


(ますます奇妙な話だ。自他共に厳しくはあるけど、基本的に公平で道理を重んじるヒューさんがそんな強引に事を運ぶなんてとても考えられないけど

・・・)


 ハイムの話にそんな疑念を覚えるトワでしたが、この場にヒューがいない為に直接話も聞けず真意も窺い知れぬ為にただただ呆然とします。


 そんなトワの様子をねっとりと舐め回すような視線で観察していたハイムは、含みのある笑顔を浮かべある提案を切り出します。


「しかしこのまま貴女を一方的な形で裁き処分し、バンベリー卿の名誉を貶める事は我々も不本意ではあります。そこで・・・」


 ハイムは一度そこで言葉を切り、芝居がかった口調に替え話を再開します。


「貴女と我が国を代表する栄えある正規機士団であるネヴォラス機士団に所属する機士との堂々たる一騎討ちを提案します!」


 自身の発した言葉に陶酔した様子で更に話を進めます。


「貴女が負ければ、大人しく法に従いコルタナを捨て我が国から出ていってもらいます。がもし万に一つ貴女が勝つような事があれば、罪を取り消し処分はチャラ・・・どうですかなり魅力的な提案だと思いますが?」

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― 新着の感想 ―
[良い点] トワちゃんが大変なことになりましたね。一騎打ちというのも、相手からの提案では本当に胡散臭い。危ない気がします。 [一言] 血縁主義や貴族主義、吐き気がするくらい嫌いなので、トワちゃんが鼻を…
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