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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
追放立志編
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トワ・キビマキ 二節

 クリスを村長一家が住まう邸宅まで送り届けた後、村はずれにある自分の家にかえる道すがらトワは真剣にクリスの今後を考えます。


(クリスは年を重ねるにつれどんどん体を動かせなくなってる・・・)


(心の方にも負担が掛かってるのか、最近ではさっきみたいにヤケな事を言うのも増えてるし)


 かけがえのない、幼い頃からの親友が心身共に病魔に侵されているのに、何も出来ないトワは焦燥感からかある危険な考えに思い至ってしまいます。


「村の北にある遺跡・・・子供の頃から村の大人達に近づいたり、入ってはいけないと言い聞かされたあの場所ならあるいは・・・」


 トワが住まう寒村があるドラッへの極北に程近いステネス島、その中央部には竜暦前に古代の人間か、あるいは他の種族が建造したとされる石造りの遺跡があり、遺跡の奥深くには未だ発見されていない宝の山やどんな病や怪我でもたちどころに治してしまう万能ポーションが手付かずのまま眠っているとの伝承がありますが・・・


(同時に遺跡の内部は侵入者を排除する為の罠や遺跡を住み処としている魔物も多くいるって話だし何より・・・)


「あそこはドラゴンのねぐらで、人間が余計な手出しをしたら村はおろか島ごと消し飛ばす・・・だから決して近づいてはならない・・・村の重要な掟の一つ」


 トワはかなり緊張した面持ちでそう呟き自身の発した言葉に恐怖を覚えますが・・・


(まあ多分イタズラ好きでヤンチャな子供達が遺跡の中で怪我したり、建物を壊したりしないよう大人達が作ったホラ話だしそう怖がる事はないか~)


 不安になりそうな気持ちを押し殺し、心中でそう嘯いて遺跡探索に行く事を決めてしまうのでした。


 そうしてその夜、トワは一緒に暮らしている母親が完全に寝入った事を確認した後、家を抜け出し遺跡に向かいました。


(母さんまた少しだけ細くなった気がする。私が負担になってるからかな・・・それとも亡くなった父さんのおじいちゃんがキタルモノだったからなのかな・・・)


 遺跡に向かう道すがらトワは年齢の割に少しやつれ気味の母の姿や、亡き父の家系を思い返して暗い気持ちになります。


 亡くなった父の祖父。つまりトワの曾祖父はステネス島から遠く離れた極東にある島国の出身で何か事情があってこの島にやって来たそうです。


 そんな曾祖父の事を島の、村の人々は余所者の蔑称『キタルモノ』と裏で囁き半ば村八分にしていましたが、曾祖父、祖父、父の三代に渡って島に村に溶け込もうと必死に努力した事により、トワと母は村人達から最低限の付き合いをしてくれる程度の仲にはなりました。


(まあそれでも変に絡んでくる子らはいたんだけどね)


 トワが物心ついた頃から父親譲りの髪と瞳の色を気味悪がって村の同年代の子供達は自分達の輪の中には入れず、トワもいつしか彼・彼女らから距離を置いていましたが、中には何が面白いのか小石や虫の死骸を投げつけて来る子供達もいました。


(確かそんな時だっだかクリスと出会ったのは)


 病気になる前のクリスは割と活発で、かつ村長の息子という事もあってか正義感が少々強くお節介焼きだったので、トワが受けていた仕打ちが我慢ならなかったらしく村の子供達を止めようしますが、逆に腕っぷしの強いガキ大将とその子分達に取り押さえられ殴られそうになるのでしたが・・・


(その光景を見てなぜか思わずカッチーンと来ちゃってガキ大将達を全員ボッコボコにして診療所送りにして、村の大人達から滅茶苦茶怒られたけど・・・)


 しかしその事が切っ掛けで友人となったトワとクリスは以降十年と少し、クリスが病に倒れた後でも変わらぬ友情を築き上げてきました。

しかしそれだけに日に日に弱っていくクリスをただ傍らで見ているしかない自分に悔しさと情けなさを常に感じていました。


「どんな結果になるにしても・・・私がやるしかないんだ」


 暗闇に包まれ、海風によりゴウゴウと不気味な音を響かせる巨大な石柱が並ぶ遺跡の入口を前にしてトワはそう力強く呟くのでした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] しっかり個性のある世界観だと思いました。 [気になる点] 地の文の頭は一文字分開けるのが文法のセオリーですよ。
[良い点] 用語の説明も丁寧で、トワの置かれている状況がよく伝わってきました。過去の、村の子どもたちから受けた仕打ちやそこからのクリスとの友情が克明に描かれていて良かったです。 [一言] トワは遺跡に…
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